オープンデータ推進 官民連携の共助拡大 地域課題解決の糸口に


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オープンデータの意義を語る県DXアドバイザーの福島健一郎氏=26日、那覇市

 デジタル庁の「オープンデータ伝道師」や「県DXアドバイザー」を務める福島健一郎氏が26日、本紙の取材に応じ、行政がオープンデータに取り組む意義などについて語った。福島氏は、人口減社会の到来により従来型のさまざまなサービスを提供する行政の在り方は行き詰まりを迎えると指摘。「テクノロジーを活用した官民連携の共助を広げる必要がある。官がオープンデータを提供し、民が活用する。デジタル社会のインフラのデータがないとテクノロジーを活用できない」と強調した。

 国は人口減が著しいことを踏まえ、社会のあらゆる分野でデジタル技術を活用するDX(デジタルトランスフォーメーション)化を進め、既存サービスの維持と効率化を進める。デジタル庁によると、全国市区町村のオープンデータの取り組み率は71%だが、県内市町村は26・8%で全国最下位となっている。

 福島氏は官民連携の好例として、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた台湾を挙げた。政府がマスクの販売店舗のオープンデータを提供すると、市民が自発的にデジタル技術を活用して地図を作成し公開して社会の混乱を防いだ。

 「これからの行政は台湾のようにサービスを提供する材料を提供する『サービスプラットフォーム』になる。この材料がオープンデータだ。法律で行政はデータを利活用しやすい形式で公開することが義務づけられており、業務フローから見直す必要がある」と語った。

 福島氏は県内でオープンデータの取り組みが進まない一因として、沖縄は全国有数の人口増加県のため、あらゆる担い手が減っている県外の地方自治体よりも危機感に差があるとした。

 先進自治体の静岡県では南海トラフ巨大地震を想定し、あらゆるオープンデータが防災につながっていると指摘。「全国的にも地域課題に即した差がある。オープンデータの官民連携を推進するために、例えば沖縄ならではの課題を有する海洋に関するデータを先に公開して民間活用を促すなど、沖縄なりの意義付けがあってもいい」と提唱した。

 福島氏は自治体のデジタル活用などを支援する石川県のアイパブリッシング社の社長。沖縄支社も有する。市民がデジタル技術を活用して社会課題を解決する「シビックテック」推進団体の代表理事も務める。 (梅田正覚)