幸福重視の政治に転換を 軍事国家志向 菅原文子さんコラム<美と宝の島を愛し>


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 玉城デニー知事再選にホッとしたが、英国女王の国葬、旧統一教会と自民党議員の癒着などのニュースに押され、再選報道は本土では目立たなかった。故英国女王が王位に就いたその年は、日本では前年に締結されたサンフランシスコ平和条約と日米安全保障条約が発効し、同年、日米行政協定(日米地位協定の前身)も締結された。無残な敗戦で終わった日本が、沖縄を残したまま再出発した年である。それ以降の日本の経済復興が戦後史の日の当たる面とすれば、影の部分は、70年たってもまだ戦勝国の下位に置かれ、沖縄をはじめ少なからぬ面積を米軍に差し出し、今や武器商人国家となった米国から多額の兵器を買う現実だ。その影は経済大国の地位を降りた今、ますます濃くなっている。

 日米政府が強行する辺野古新基地建設は、地球環境が各国の主要な政治テーマになっている今日、世界の流れに逆行している。莫大(ばくだい)な血税の無駄遣いでもある。共同通信社の世論調査でも辺野古への移設反対が60%近い。建設地を辺野古しかない、辺野古が唯一、と固執する理由を説明しないまま結論だけを押し付ける。その理由は何なのか、メディアも識者も誰もその答えを知らない。

 「あなたしか居ない、あなたが唯一の人」と言われたら、他には替え難い魅力や能力がその人にあるということだ。では他にはない辺野古の魅力、能力は何なのだろうか。頭に浮かぶのは、核兵器が置ける「辺野古弾薬庫」の存在だ。弾薬庫は嘉手納基地にもあるが、その仕様でもなさそうだ。やはり核兵器保管場所は「辺野古が唯一、辺野古しかない」のかもしれない。目下、5百億円以上の血税を使って弾薬庫の大工事が行われており、米軍は極東での有事の備えを着々と進めているように見える。万一、台湾有事が起きても、日本とりわけ沖縄の米軍基地で食い止め、局地戦で終わらせることができる。米中どちらかの本土を攻撃するのは、世界世論からの非難を含め軍事費も膨大になり、まずあり得ない。局地戦で一番損をするのは、日米安保条約に縛られる日本だ。

 米国はぺロシ下院議長の訪台、バイデン大統領発言などで強烈に中国を刺激しているが、米国が仕掛ける戦略的対立は、有事をあおって兵器を日韓台湾に買わせる武器商人国家米国の巧妙さだ。国葬に米政府が団体で参列する予定だが、玉城知事再選、旧統一教会問題で内閣としての力を損なった自民党にてこ入れする目的もあるのだろう。

 地理的にも政治経済的にも超大国米中のはざまにある日本には、穏健な立ち位置を両国に示す政治力を期待したいが、心もとない。今は、安倍政権下に際立った軍事国家志向は国葬を機に、二度と立ち上がれないように地下深く埋め、身を切り刻むようにして生きる国民の幸福に力を注ぐ政治に転換したいものだ。チェンジ!である。この国に平和がある今なら、まだ間に合う。

(本紙客員コラムニスト、辺野古基金共同代表)