〈124〉妊娠中の歯科受診 子どもの虫歯予防にも


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 女性は男性よりも歯周病になりやすいといわれています。これは女性ホルモンが大きく関与しており、歯周病を引き起こす原因となる菌の増殖を促すためです。

 また、妊娠すると抵抗力が落ちることからも、さらに歯周病になりやすくなります。歯周病は妊娠に悪影響を及ぼし、早産や低出生体重児、妊娠高血圧症候群などを引き起こします。一方、唾液は虫歯の発症を抑える働きがありますが、妊娠中は唾液の分泌量が減ることで虫歯になりやすくなるため、妊娠すると口腔(こうくう)内の環境は悪化します。

 実はこれは、子どもの虫歯にも繋(つな)がります。子どもの虫歯予防には保護者自身の口腔ケアが大切です。妊娠中に口腔内の環境を整えることで、母から子どもへの虫歯の原因となる細菌感染を予防でき、不適切な食生活の予防に繋がります。

 子どもの歯科治療は生まれる前のマイナス1歳から始まっているといわれ、妊娠中に歯科受診をすることで、妊婦さんとお腹の赤ちゃん2人分の治療を受けられることになります。

 つまり、妊娠中の合併症を減らし、赤ちゃんへの影響を減らすためにも、妊娠中こそ定期的に歯科受診をする必要があります。また、妊娠中の歯科治療は、赤ちゃんには影響がないことが分かっています。

 妊娠中に歯科受診が途絶えてしまった方に、産後に歯科治療の再開を計画することもあります。ですが産後は赤ちゃんのケアが忙しく、口腔内の環境が悪化してからの受診となることもあり、追加の歯科治療が必要となる場合もあります。

 現在の親子健康手帳(母子手帳)の中には妊産婦さんに歯科受診を促す「妊娠中と産後の歯の状態」というページがあります。日本産科婦人科学会が定めた診療ガイドラインにも「歯科医師と連携し口腔ケアを勧める」と示されています。

 2019年1月には、日本歯科医師会と日本産科婦人科学会が、妊産婦への予防歯科の普及に向け連携し、国としての取り組みも始まりました。妊娠したら、ご自身の口の中にも興味をもっていただければと思います。

(諸井明仁、県立北部病院 産婦人科)