落下事故、世界各地でも ハッチを開けての飛行、規制できず <欠陥機今も~オスプレイ配備10年~>中


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機体のハッチが開いた状態で民間地上空を飛行するMV22オスプレイ=9月21日午後4時49分、宜野湾市内(ジャン松元撮影)

 空から突如落ちてきた水筒は水しぶきをまき散らしつつ建物の壁に激突した。「車に当たっていたら貫通したのではないか」。後に映像を見た人が、そう語るほどの衝撃だった。2021年11月23日、宜野湾市野嵩の民家敷地内に米軍普天間飛行場所属のMV22オスプレイからステンレス製の水筒が落下した。発生は午後6時45分。飛行場からの離陸直後だった。事故現場となった民家の住民は「けが人は出なかったが近くの親類は30分前に近くを通っていた。そのことを考えると今も恐ろしくなる」と当時を振り返り声を震わせる。

 事故後、在沖米海兵隊は民間地上空では機体ハッチの閉鎖義務を検討していると県や市などに説明したが、事故後に本紙記者は市内でハッチを開いた状態での飛行を複数回確認。米海兵隊は9月27日、本紙取材に「できる限り住宅密集地上空でも後部ハッチを閉めた状態で飛行している」とした上で訓練状況に応じては開ける可能性があることも示した。

 同機のハッチを巡っては事故が繰り返されている。11年にアフガニスタンで乗組員が飛行中の機体から転落し、死亡している。13年には米カリフォルニアで約19リットルのバケツ落下事故が発生。当時、同機の元主任分析官のレックス・リボロ氏は「同機は気圧調整機能がない上、後部の視界を保つため飛行中も後部ハッチを開けた状態で飛行する」と説明していた。

 航空評論家の青木謙知氏は「住宅密集地でハッチを閉めるという飛行義務がないため、現状では日本側は強いることはできない」と指摘する。その上で「日本政府などが再三要請していくことでしか、危険性を除去する方法はない」と述べた。

 水筒落下事故からやがて1年。きょうも県内上空をオスプレイが飛び回る。事故現場の住民は「開けた状態で飛行しているのはやっぱり怖い。米軍から見れば水筒くらいと思うかもしれないが。また絶対落ちるだろう」と懸念を深めている。「普天間周辺だけの問題ではない。米軍には事の大きさを認識してほしい」。かみしめるように話した。

(新垣若菜)