「基地は戦争につながる」オスプレイ配備10年 沖縄戦に動員された93歳の元白梅学徒が反対し続ける思い


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 米軍普天間飛行場にオスプレイが配備されてから1日で10年を迎えた。沖縄戦を体験した元白梅学徒(県立第二高等女学校)の中山きくさん(93)は同日までに、本紙の電話取材に応じた。オスプレイ配備をはじめ沖縄の米軍基地の集中について「今でも反対してきた思いは変わらない。基地は戦争につながると実感した世代だ」と語り、戦争や基地のない平和を求め続ける大切さを貫く。

オスプレイ配備反対の那覇市民大会に参加した中山きくさん(右)や白梅同窓会のメンバー=2013年1月、那覇市民会館大ホール

 中山さんは戦争体験に加え、米軍基地が集中する不条理を発信してきた。2007年の教科書検定を巡る県民大会や、08年の米兵女子中学生暴行事件の県民大会で共同代表を務めた。元女子学徒でつくる「青春を語る会」や「白梅同窓会」のメンバーらとオスプレイ配備反対も訴えた。

 当時は80代半ば。それでも中山さんは県外の修学旅行生などに多い時で1日2回、平和講話を掛け持ちし、「戦争に正義はない」と訴え続けた。戦争を知らない世代に戦争に突き進まないよう語らなければならないという危機感があった。

 強い使命感は、自身もそうだったからだ。中山さんは、教育で愛国主義に染まった。沖縄戦に向けた日本軍の陣地構築では軍歌を歌い、意気揚々と作業に励んだ。沖縄戦となり、野戦病院壕で負傷兵の看護にかけずり回った。激しい砲爆撃の中を逃げ惑い、大勢の学友を失った。「戦争という人類にとって一番不幸なことを味わい、人間は戦争はやるべきではない、と気づいた」

 2013年には「4・28政府式典に抗議する『屈辱の日』沖縄大会」の共同代表を務め、登壇。「平成の沖縄切り捨て」と政府の歴史認識を批判し、多くの全国紙に取り上げられた。沖縄に基地負担を強いる日本。戦争の反省を忘れ、再び沖縄が戦争に巻き込まれるのではと懸念を強める。「国全体では(沖縄への基地建設に)賛成が多く、沖縄の声が薄められてしまう。過去を知らない日本人は、国を愛するがゆえに戦争に賛成する人が増えてしまうのでは」

 コロナ後はやめたが、続けてきた平和講話には「絶対に伝えようと持っていく言葉があった」。それは「命どぅ宝、平和が一番大切」と「人類にとって戦争は悪であり、忌むべき行為である」という言葉だ。

 心身の限界を感じながら、平和への思いを若い世代に託す。「体がついていかないのが悔しいが、若い人たちが継承してくれることがとってもありがたい。平和への思いを語り続けること、これからも頑張ってほしい」

(中村万里子)