「介護難民」生まれる可能性も…介護保険制度の見直し、年金暮らしが多い沖縄で懸念されること


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 2024年度の介護保険制度改正に向け、利用者の自己負担増や給付削減に向けた議論が進む。厚生労働省は年末までに結論を出すため、社会保障審議会で議論を始めた。当事者や介護関係者は影響の大きい沖縄では利用控えが増え、症状の悪化にもつながると懸念しており、制度が目指した、介護を社会全体で支える「介護の社会化」の維持を求めている。

 見直しの焦点は、利用者負担を原則2割とすることや要介護認定1・2の訪問・通所介護を保険給付対象外とすること、ケアプランの有料化など。関係者は負担割合の増加が「介護難民」を生みかねないと危惧する。

 介護サービスの自己負担割合は所得に応じて1~3割となるが、県内では約9割の利用者が1割負担だ。県介護支援専門員協会会長でケアマネジャーの高良清健氏は「沖縄は年金暮らしが多く、子を養っている家庭もあり、経済的に余裕がない」と説明する。

 月1万円を負担できれば週3回のデイサービスや福祉用具をレンタルできるが、介護支援という視点では不十分な事例も多い。制度の入り口であるケアプランまで有料化されると、利用控えは容易に想像できるという。

 高良氏は「健康状態が悪化してから搬送されても、介護保険を利用できない状態なら入退院支援や施設入所の調整も難しい。最終的に家に戻るしかなくなり、当事者だけでなく医療・介護業界全体に影響しかない」と危機感を抱く。

 要介護1・2が介護保険サービスから除外されることも介護する家族には死活問題だ。認知症の人と家族の会県支部の鈴木伸章代表によると、要介護1・2でも徘徊がある例もあり、訪問・通所介護は家族のレスパイト(休息)や離職防止の意味でも重要なサービスという。しかし、国は要支援1・2と同様に各自治体の「介護予防・日常生活支援総合事業」に移行する考えだ。

 同事業は介護の専門家による支援ではない上に、自治体予算の関係で地域格差が出かねない。介護人材不足で必要なサービスが不足することも懸念される。鈴木代表は「家族が介護を続けるしかなくなると、介護疲れや離職、生活困窮を招くリスクもある。国の掲げる介護離職者ゼロは無理がある」と指摘した。

 介護施設にとっても死活問題だ。社会福祉法人沖縄にじの会が運営する特別養護老人ホームゆがふ苑の玉城好史施設長は「利用控えの影響は計り知れない」と語る。

 社会福祉法人には、利用費の減免制度があるが、一部は施設側の持ち出し。コロナ禍で減免対象者は増加し、制度維持できない施設も出ている。利用者の負担増は施設運営にも直結し、玉城施設長は「制度を維持しても必要なサービスは受けられない状態になりかねない」と、現状維持を求めた。
 (嘉陽拓也)