〈125〉最近のアトピー性皮膚炎 新薬登場で選択肢増


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 アトピー性皮膚炎は、かゆみのある湿疹が良くなったり悪くなったりを繰り返しながら持続する皮膚の病気で、患者さんの多くは遺伝的にアレルギーを起こしやすい体質(アトピー素因)と乾燥肌があります。

 幼児期に発症して、成長とともに症状が寛解することがありますが、一部の患者さんでは成人しても症状が持続します。

 アトピー性皮膚炎は、アトピー素因や皮膚のバリア機能低下などの体質と、ホコリや汗、ストレスなどの環境要因が組み合わさり発症します。

 悪化因子の除去、皮膚の保湿、適切な薬物治療がアトピー対策の基本となります。症状が軽微で日常生活に支障がない状態を維持することを最終目標に治療を行います。ハードルの高い目標に感じるかもしれませんが、新たなアトピー治療薬が登場したことで実際に多くの患者さんで実現可能となってきています。

 アトピー性皮膚炎の治療は、抗炎症効果をもつ外用薬を中心に行います。これまで使用されてきたステロイドとタクロリムス外用薬に加え、2020年にかゆみやアレルギーシグナルに関与するヤヌスキナーゼ(JAK)という酵素を抑える「JAK阻害薬」の外用薬が登場しました。これまでの外用薬と異なり、かゆみの抑制だけでなくバリア機能を改善させる点が特徴です。

 より重症の患者さんへの治療として、皮膚症状やかゆみを生じるインターロイキン(IL)―4とIL―13を抑える注射薬や、先ほど紹介したJAK阻害薬の内服薬が12歳以上の患者さんで使用できるようになり、重症アトピー治療の選択肢が増えました。そして今後も新しい治療薬が登場する見込みです。

 これらの新薬は頑固なかゆみにも高い治療効果を示しますが治療費が高額となるため、多くの患者さんが医療費の助成制度を活用しつつ治療することになります。今までの治療でなかなか改善せず、半ば諦めていた患者さんの手助けになることは間違いありません。お困りの方はぜひ一度、お近くの皮膚科医へ相談していただければと思います。

(與那嶺周平、琉球大学病院 皮膚科)