エリセーバさん「女性の健康研究所、設立へ」 西田さん「研究者と住民、行政で連携を」<国連総会科学サミット 沖縄発(中)>


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(左から)オリガ・エリセーバさん、西田睦さん

 9月の国連総会に合わせて開かれた第8回科学サミットで20日、沖縄発のセッションがオンラインで開かれた。

 琉球大の西田睦学長とOIST客員研究員のオリガ・エリセーバさんの基調報告を伝える。

 当日の様子はhttps://www.youtube.com/watch?v=RW0NwvTG2rgから。

 

女性の健康研究所設立へ オリガ・エリセーバさん(OIST客員研究員)

 

 自分が更年期になったのを機に女性の健康に関する論文などを読んだが、科学的な研究が全く進んでいないことに驚いた。がんワクチンを専門的に研究してきたが、過去20年の間に新しくできた治療薬をみると、女性の健康に関する新薬は片手で数えられる程度だ。痛み止め使用者の7割が女性だが、8割が男性中心の臨床試験で評価されている。

 女性は人生を通してホルモンの変化が大きく、体を合わせないといけない。一方男性は穏やかで、かかる病気も違う。女性たちは月経痛や、女性がなりやすいリウマチや片頭痛など、痛みを抱えながら社会も家庭も支えている。特にアジア地域では我慢する文化があり、社会に合わせないといけない。女性の加齢や精神的な問題に対する偏見もあり、ヘルスリテラシー教育が不足している。女性は病気が好きとか、構ってほしいとか思っている人が意外に少なくない。科学的な研究データや専門家の育成が足りていない。

 今後沖縄でアジア女性健康研究所と医療センターの設立を目指している。人生100年時代を迎える中で40、50歳を超えても社会で活躍したい女性はたくさんいる。女性が健康に生きることで、いろんなSDGsの目標達成につながる。

研究者と住民、行政連携 西田睦さん(琉球大学長)

 

琉球大学は地上戦で焼けた首里城の跡地に本館が建てられ、戦後の地域復興を担う人材育成研究に取り組んできた。「地域とともに豊かな未来社会をデザインする大学」というテーマで、地域の特色を生かした研究、教育、アウトリーチ活動を展開している。

 まず地域の特性を知ってもらうための授業「琉大特色・地域創生科目」を全学生は必ず履修することになっている。

 琉大のフィールド研究の施設は、昨年、世界自然遺産に登録された本島北部や西表島にあり、活発な研究教育がなされてきた。今後さらに展開すると、国立自然史博物館を沖縄に作る計画にもつながってくる。

 2019年6月にSDGs推進室を設け、全学挙げて取り組んでいる。研究者と住民と行政が連携し、陸上養殖のグローバル拠点を作ろうというプロジェクトが動いている。農業や再生可能エネルギーと合わせたシステムを作って、離島やアジア地域に展開していく。

 ICTを活用した離島教育改善事業にも取り組み、各離島をインターネットでつないで授業を実施している。今後より充実させていきたい。