きょう「闘牛の日」芥川賞作家・又吉栄喜さんが語る、題材にもするその魅力とは


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闘牛の魅力を語る作家の又吉栄喜さん=7日、浦添市

 10月9日は語呂合わせで「闘牛の日」。畜産振興と観光発展を目的に1962年に闘牛組合連合会が結成され、ことしで60年を迎えた。結成を機に始まった沖縄全島大会は現在も3千人超の観客が押し寄せ、立ち見が出るほどの盛況で、そのほかの大会でも1500人を超える来場者でにぎわう。これまで闘牛を題材にした作品を多く手掛けてきた芥川賞作家の又吉栄喜さん(75)は「時代がどう移り変わっても、真っ向から純粋な気持ちで相手に向き合う変わらぬ闘牛の勇姿が『理想の存在』として人々の心に響くのだろう」と魅力を語る。

 自身が育った場所である浦添市城間を中心に半径2キロの世界で体験した話や風景から作品を描いた又吉さん。その中には闘牛場も含まれていた。「カーニバル闘牛大会」に始まり、「牛を見ないハーニー」「闘牛場のハーニー」「島袋君の闘牛」など、次々と作品を発表している。

 その中には、米軍に抑圧されるウチナーンチュの姿も同時に描かれる。「たくましくて、負けてもへこたれず、一心不乱に闘う闘牛の堂々たる姿勢は沖縄の理想の姿そのままだと感じた」と振り返り、「闘牛のようにあれ、との願いも込められている」と語る。

 現在、県内各地にあった闘牛場はその多くが姿を消し、年間大会のほとんどがうるま市の石川多目的ドームで開催されている。又吉さんの作品の基となった城間闘牛場(浦添市)も今は残っていない。「太陽の下で、人間も牛も汗を垂らして、見るのが好きだったけど」と残念がる。

 自身の作品傾向は「最近はどちらかというと牛から豚に変わっていっている…」と笑う。一方で「闘牛文化は絶やしてはいけないという強い思いはある。2本の角のみで勇ましく闘って沖縄を鼓舞し、勇気を与えてくれるものだから」と話し、笑みを見せた。

(新垣若菜)


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