事故原因、いまだ特定されず 高江・米軍ヘリ炎上5年 繰り返される低空飛行や夜間訓練、住民の不安続く


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事故現場で5年前を振り返り、今も変わらない状況を説明する西銘晃さん=6日、東村高江

 【東】2017年10月に東村高江の牧草地に米軍のCH53E大型輸送ヘリコプターが不時着・炎上した事故から11日で5年となる。事故原因が特定されないまま、現場周辺や住宅地の上空では米軍機の低空飛行や夜間訓練が繰り返される。区民は、いつまた事故が起きるか分からない不安の中で暮らしている。

 今月5日の日中、事故現場の所有者・西銘晃さん(69)は自宅近くで作業中、ヘリの音が聞こえて顔を上げた。数百メートル先にある事故現場周辺を、事故機と同型機が2機、飛んでいた。西銘さんは「事故現場や自宅の上を飛ぶのはいつものこと。昼も夜も関係ない」と指摘する。

 午後11時ごろ、自宅上空に飛来することもあるという。「5年たっても事故原因すら分からず、頭上を飛び交っている。日本は主権がないよね」と語気を強めた。妻の美恵子さん(68)は「機体が突っ込むように接近するのが窓から見える。驚くほどの低空飛行もあり事故の恐怖がよみがえる」とため息をつく。

 防衛省は17年12月、米軍機が夜間に集落を避けて飛行するための目印として、西銘さんら4世帯の南800メートルに航空標識灯1基を新設した。しかし西銘さんによると、効果はなく「米軍は無視して入ってくる。標識灯は全く役に立っていない」

 5年前、西銘さんや区は事故原因の究明を求めた。しかし県警が十分に現場検証をできないまま機体は撤去され、周辺の土壌も持ち去られた。関係者の事情聴取もできなかった。捜査には米側の同意が必要とする日米地位協定が妨げとなった。

 20年に県警は事故を被疑者不詳のまま書類送検し、不起訴処分が決まった。防衛省の調査報告書では、飛行中にエンジンで火災が発生したとされるが、火災の原因は判明していない。

 西銘さんは「『原因は分かりません』で済まされてしまっていること自体があり得ない。原因が分からずに再発は防げない」と語る。美恵子さんは航空標識灯の存在に触れ、米軍に対し「沖縄に基地が必要で撤去できないなら、約束は守ってほしい。島を大切にする誠実さを示してほしい」と求めた。
 (岩切美穂)