「劣勢」と言われた選挙戦…徳元陣営、挽回の契機となったのは<市政奪還・2022豊見城市長選>上


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企業関係者や市職員、市民らが詰めかけた徳元次人氏の総決起大会=9月28日、豊見城市立中央公民館大ホール

 9月28日、豊見城市立中央公民館大ホールは2階席の奥まで立ち見の人で埋め尽くされた。豊見城市長選に立候補する徳元次人氏(41)の総決起大会だった。市内外の企業などから約1200人(陣営関係者)が詰めかけた。陣営関係者は「あれから流れが変わった」と振り返る。

 「劣勢」と言われた選挙戦だった。1期4年の実績を訴える現職の山川仁氏(48)と事実上の一騎打ち。9月11日の県知事選では玉城デニー氏が豊見城で約1万3900票を獲得。保守系の他候補2人の票数を足しても750票余り玉城氏が上回っていた。陣営には「現職(山川氏)優勢」の声が連日入った。

 豊見城には、約1万3千票の保守票があるとされる。陣営は勝利に向け、これを得票数の最低ラインに設定した。組織票を手堅くまとめるため企業回りを徹底。人数で勝り、山川陣営に負けムードを醸成させる戦術で、陣営は集会に市外からも動員をかけた。総決起大会がその皮切りだった。

 8日の打ち上げ式は市役所前の交差点に約500人(陣営関係者)が集まった。ふたをあけると、徳元氏は1万3335票を獲得。陣営の最低条件を「クリア」する狙い通りの得票数で市政奪還を果たした。

 ある陣営関係者は「政策ではなく、戦術で勝っただけ」と冷静に述べた上でこう言った。「徳元が強いのではなく、山川が弱いだけだ」

 「しっかりとバトンはつないだから」。徳元氏の選対本部長で自民党県連幹事長の島袋大氏は、徳元氏の当確が決まって沸き立つ選挙事務所に姿を現した那覇市長選立候補予定者の知念覚氏(59)=自民、公明推薦=にそう言葉をかけた。参院選、知事選の連敗で止まった勢いを回復させ、組織態勢の立て直しにつなげるためにも、豊見城市長選の勝利は県都決戦に向けた「前提条件」(自民県連幹部)と位置付けられていた。

 「隣の市でこのうねりは、かなり影響する」(島袋氏)と自公は追い風ムードへの期待感を高める。一方、ある自民県連関係者は無党派層が多いとされる那覇市の地域特徴などを挙げ「(豊見城市とは)全然、別物だ」と気を引き締めた。

(照屋大哲、大嶺雅俊)


 豊見城市長選で、自公が支援する新人候補者が「オール沖縄」勢の現職候補者を破った。選挙戦の舞台裏と目前に迫った那覇市長選への影響を追う。