米中の対立、冷戦時代に比べ複雑に 日本総合研究所上席理事の呉軍華氏が講演 <琉球フォーラム>


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呉 軍華氏(日本総合研究所上席理事)

 会員制の講演会組織「琉球フォーラム」(主宰・普久原均琉球新報社長)の10月例会が12日、那覇市のロワジールホテル那覇で開催された。日本総合研究所上席理事の呉軍華(ウ・チィンファ)氏が「対立から対決に向かう米中関係」と題して講演した。

 呉氏は「準同盟」だった米中関係が「戦争に向かっている」と指摘。2国間関係は「冷戦時代の米ソ関係と比べ、一層複雑で対立に潜むリスクはより大きい」と述べた。対決の回避には「中国が変わる」か「米国が諦める」必要があるが、いずれも「現時点でゼロに近いのでは」とした。

 衝突のリスクは、短期的には「パワーバランスが中国に絶対的にシフトしていないため低い」と述べるも、中期的には「一つの地球で二つの世界」か、そうならずに「衝突」かという二つのシナリオを提示。後者になる確率が「高い」との見通しを示した。台湾海峡での衝突回避には、パワーバランスや両国の内政が大きく影響するとした。

講演に耳を傾ける参加者=12日、ロワジールホテル那覇(喜瀬守昭撮影)

 中国では、支配層の内部粛清と大衆統制で独裁体制が「強化の一途をたどっている」と述べ、米国も国内の分断と対中国感情の悪化で対中強硬が進むとの見方を示した。日本として当事者意識を持って出口戦略を考える必要を指摘した。
 (中村万里子)