「リードしてる」感触も一転…「パワハラ問題」影響か 山川氏の再選を阻んだもの<市政奪還・2022豊見城市長選>下


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敗戦の弁を述べる山川仁氏=9日午後10時17分、豊見城市宜保の選挙事務所(大城直也撮影)

 沖縄県豊見城市長選で再選を阻まれた現職の山川仁氏(48)の選対関係者は「(相手候補と)運動量が違った」と唇をかんだ。玉城デニー知事の勝利に沸いた県知事選から一転、「オール沖縄」陣営は玉城県政と連携をとる市政をまたしてもひっくり返され、組織の弱体化という課題を改めて突きつけられた。

 「パワハラ問題が響いた」。山川氏の支援者は口をそろえた。

 市長から叱責(しっせき)やどう喝を受けたという市職員の訴えを、市議会野党が昨年から追及してきた。議会に実態把握調査特別委員会が設置されたのに対し、山川氏自身も第三者委員会を設置して真相究明を託す展開となった。

 応酬が長期化する中で市長選の告示が近づき、山川陣営は支持者からも「パワハラは本当にないのか」と繰り返し問われることとなった。第三者委員会で事実認定がされていないことを説明して疑惑の打ち消しを図ったが、最後まで印象を引きずった。

 選挙戦で山川氏は1期4年の実績を強調し、給食費の段階的無償化などの子育て支援を前面に押し出す公約を掲げた。自公が推す新人の徳元次人氏(41)の陣営関係者も「政策では山川だ」と認めた。玉城知事とのセット戦術を徹底し、陣営内では「リードしている」との感触があった。

 だが、三日攻防に入ると、徳元陣営の豊富な運動量が猛烈に追い上げてきているとの情報に接していた。本来なら山川氏の支持基盤となる労働組合票だが、一部が相手陣営に流れていた。4年前は山川氏に投票した有権者のうち2割が今回は徳元氏に投票したという、ある期日前投票の出口調査も伝わった。若者やSNS対策も相手が上回り、企業回りなどの運動量でも追い付くことができなかった。

 結局、投票率が過去最低の49・72%にとどまる中で山川氏は前回から700票余り減らし、徳元氏に約2800票差をつけられて敗れた。山川氏の陣営関係者は「こちらが票を伸ばせなかった」と唇をかみ、パワハラ疑惑を払拭できず、政策を競う選挙に持ち込めなかったと肩を落とした。

 オール沖縄勢は今年ある七つの市長選で6連敗し、目前の那覇市長選を落とすようだといよいよ足場は失う。保守・経済界の離脱が続き、早急な体制の立て直しが求められるが、ある県議は「今まで負けた市長選の総括もできていない」と危機感を募らせた。

(照屋大哲)