【記者解説】PFOSの健康影響、鮮明に 死亡リスクと相関 積極的な除去策が必要


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 人体への有害性が指摘されてきた有機フッ素化合物の一種、PFOSについて、血中濃度が高い人の死亡リスクが上がるという統計が発表された。論文は各種の疫学追跡調査でよく引用されるCDCの「全米健康・栄養調査」のデータを分析したもの。米国では調査データがあるために今回の分析が出されたが、国内では国や県による血中濃度検査は実施されていない。影響の解明を求める市民団体などが自主的に実施している状況だ。

 統計はPFOSによる健康被害を数値として改めて可視化しただけでなく、もう一つポイントがある。2015年から2018年のPFOSへの暴露による年平均の死者数は、1998年から15年と比べて5分の1以下に減ったと見積もったことだ。PFOSへの規制が国際的に進んだことが要因だと推察している。

 言い換えると、有効な規制があればリスクが減るということだ。PFOSは自然環境中ではほとんど分解されないため、積極的な汚染除去策の必要性が改めて浮き彫りにもなった。県内では米軍基地が主要な汚染源だとみられている。いまだ実現していない基地内調査と汚染源の除去に向けた根拠付けにも重要だ。

 リスク分析と対策の有効性を検証するためにも、基礎データは重要な役割を果たす。米国ではさまざまなデータ分析の結果、PFOSを含む有機フッ素化合物(PFAS)への規制強化が進んでいる。国内では国も県も血中濃度検査の実施に後ろ向きで、対策は遅れている。
 (島袋良太)