復帰直後の沖縄〈50年前きょうの1面〉10月18日「韓国に戒厳令/朴大統領発表」―琉球新報アーカイブから―


この記事を書いた人 Avatar photo 滝本 匠

 1972年5月15日に沖縄が日本に復帰してから今年で50年。27年間のアメリカ施政権下から脱して「祖国」の日本に戻るカウントダウンが進む中、本土との格差是正、自衛隊配備や米軍基地の取り扱い、ドル―円の通貨切り替え問題、初の知事選など、大きな歴史のうねりに翻弄される島の住民は山積する課題に直面する、そんな時代だった。復帰した後の沖縄の発展を展望しつつも、さまざまな制度変更にさらされる行政と政治。琉球新報の紙面もその歴史の一日一日を刻んでいった。

 

 日本「復帰」した1972年10月18日の琉球新報1面トップは、「厚生年金の改正意見提出/月5万円に大幅増/厚生年金保険部会/スライド制も導入」との見出しで、政府厚生省の社会保険審議会が年金額増の意見書をまとめたことを伝えている。関連で「実現までなお論議/世論を反映して画期的な案」との解説記事を掲載している。

 沖縄県の振興開発計画案を巡って「野党、方針転換迫る/振興開発計画、具体策に乏しいと批判」との見出しで、県議会本会議での代表質問の質疑の様子を紹介している。関連で「24日に国土開発審議会/新全総に沖縄ブロック追加」との見出しで、国の沖縄振興開発審議会の発足についても報じている。

 国際情勢に関連して「韓国に戒厳令/朴大統領発表/憲法停止、国会解散も」との見出しで、朴正煕大統領が17日に非常戒厳令を公布したとの記事を掲載している。記事によると朴大統領は戒厳宣布広告で理由について「歴史的試練を克服し、民族と国土の平和的統一を実現するため」と述べているという。さらに「現行憲法のうち効力が停止された条項の機能は今後、非常国家評議会によって遂行される。同標議会は今月27日、祖国平和統一を目指した憲法改正草案を提出し、その後1カ月以内に国民投票に付することになっている」と記している。

 神奈川県の米軍相模原補給敞から米軍戦車が移送できない問題を巡って、政府が戦車移送できるように車両制限令を改正した問題で「米戦車通行/答弁食い違い緊迫/木村建設相、〝海洋博道路を促進〟」との見出しで参院内閣委員会の審議の様子を紹介している。建設省と外務省の答弁の食い違いで一時審議が中断する場面もあったという。木村武雄建設相は「米軍基地を通る沖縄の国道の機能回復や海洋博用の高速道建設のため」と答弁したのに対し、外務省側は「それだけがすべての理由ではない。米軍基地間の移動が現行法上担保されていないからだ」と答え、質問した鈴木力氏(社会党)が食い違いに納得せず審議が中断した。

 関連で「美濃部知事が抗議声明/車両制限令の改正で」と東京都知事も抗議声明を出し、「野党、特例撤回を要求/官房長官、既定方針を強調」と野党の反発にも政府は方針を繰り返している様子を紹介している。

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 5月15日で復帰を迎えたが、沖縄を取り巻く状況は復帰して変わったこともあれば、変わっていないこともあった。琉球新報デジタルは、復帰を迎えた沖縄のその後の姿を琉球新報の紙面でどう記したか、引き続きお届けしていきます。