嘉手納基地の防錆格納庫移設計画、超党派で見直し求める動き 沖縄県議会、全会一致で決議へ


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県議会の赤嶺昇議長(中央)に防錆整備格納庫の移設撤回に向けて、県議会として働きかけを求める嘉手納町の仲村渠兼栄議長(右から3人目)ら=12日、沖縄県議会(嘉手納町議会事務局提供)

 【嘉手納】7月に浮上した嘉手納基地で航空機のさびを落とすための防錆(ぼうせい)整備格納庫移設計画問題。県議会は18日にも計画の見直しを求める決議・意見書を全会一致で可決する見込みだ。嘉手納町や町議会は日米の関係機関に計画撤回と見直しを求めて再三要請。基地問題を巡っては長く「オール沖縄対自公」の構図が続いてきたが、今回の問題では超党派で見直しを求める動きとなっており、地元嘉手納町での反発の大きさをうかがわせている。日本政府も米側に見直しを求める異例の展開となっているが、米軍は一顧だにしない状況が続いている。

 2019年2月から駐機場として使われている米軍嘉手納基地の旧駐機場「パパループ」。長らく使用されず、民間地に近いことから「緩衝地帯」(當山宏町長)と認識されてきた。米軍は町に当初、使用期限を2年間と説明していたが、約束は守られず、騒音や悪臭被害の温床となった。移設計画はパパループ地区の使用を恒常化する狙いもあるとの見方もあり、町民には不安が広がっている。

 町は移設計画そのものには反対せず、あくまでも住民生活に悪影響を及ぼさない場所への建設を求めてきた。米軍に対し、民間地から遠い場所に移す代替案も提示するなど、譲歩する形で要請を繰り返した。だが、町議会の要請を受けた第18航空団広報局長のレイモンドP・ジェフリー少佐は「現段階で第18航空団として(パパループ地区周辺への計画で)決定している」と回答。町の提案を拒否した。

 地元と米軍の交渉が平行線をたどる中、嘉手納町内の民家などには「防錆整備格納庫建設やめろ」と書かれたのぼりも見られるように。町民からは移設計画に反対する町民大会の開催を求める声もある。當山町長は町民大会開催の可能性を示しつつも「政府に計画の見直しを働きかけてもらえるよう要請している段階だ。状況を見守りたい」と述べ、最後の切り札として手元に残す。

 ただ米軍は現計画で進める構えを崩していない。手詰まり感のある事態を打開しようと、町議会は12日、県議会の赤嶺昇議長や各会派に計画撤回に向けた協力を要請。18日の県議会9月定例会最終本会議で計画の見直しを求める決議・意見書が全会一致で可決される見込みだ。さらに県議の一部では意見書などが可決されれば、県議会と町議会が同時に上京する案もつぶやかれている。

 県議会の超党派の動きについて、町議会の仲村渠兼栄議長は「建設そのものに反対していないことが団結できた要因ではないか」と分析する。「最大公約数的な訴えとして、住民生活に影響しない場所での建設の見直しを求めている。米軍は良き隣人として住民の思いを受け止めてほしい」と述べた。この訴えを受け止め計画を見直すのか、それとも無視して計画を進めるのか。米軍の動向に注目が集まる。
 (名嘉一心)