隔離施設を設置し高齢者や医療的ケア児を受け入れ 沖縄県内のコロナ対策支援、東京のジャパンハートが活動報告


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医療的ケア児の当銘蓮人君に対応する職員ら=7月21日、宜野湾市

 新型コロナウイルスの流行以後、2020年6月から県内で支援活動を続けてきた特定非営利活動法人ジャパンハート(東京都、吉岡春菜理事長)が9月末で本格的な支援を縮小した。この間、介護施設のクラスター(感染者集団)支援だけでなく、濃厚接触者の隔離施設を設置し、高齢者や医療的ケア児も受け入れてきた。4日に琉球新報社で活動を報告した副事務局長の高橋茉莉子さんらは、県や医療機関、福祉・介護事業所の連携が強い県のコロナ対応に感謝し「必要な支援を迅速にできた。挑戦してよかった」と振り返った。

 ジャパンハートは、県の看護師派遣要請を受け、クラスター(感染者集団)支援を開始した。その中で、流行拡大期の病院や介護施設では感染対策や治療に追われ、濃厚接触者の対応が手薄にならざるを得ない状況を痛感し、企業の寄付を活用して隔離施設を立ち上げたという。

 介護施設にとっては濃厚接触者を守りつつ、職員の業務負荷を軽減し、通常営業を早めるメリットがある。在宅ではさらなる家庭内感染を防ぐことができる。こうした事情から需要は多く、2~9月末まで約40人を受け入れてきたという。

 爆発的な流行が起きた7月には、家庭内で濃厚接触者となった医療的ケア児の当銘蓮人(れんと)君(7)も受け入れた。蓮人君以外の家族全員が感染する中、母親の万希子さんが行政や病院に掛け合っても受け入れ先が見つからず「感染させたらどうしようと、ずっと不安だった」という。

コロナ支援の活動を報告した(左から)早坂恭一さん、高橋茉莉子さん、看護師の原田雅美さん=4日、那覇市の琉球新報社

 多くの知人や訪問看護事業所の協力で、ジャパンハートに駆け込むように入所。ジャパンハートとしても医療的ケア児の対応は初めてだったが、蓮人君を見てきた訪問看護師の協力で12日間にわたるケアを続けた。重症化リスクの高い蓮人君の感染を回避できたことに、万希子さんは「本当に言葉にならないぐらいの感謝です」と、何度も繰り返した。

 ジャパンハートのコーディネーターの早坂恭一さんらは、沖縄県全体ののコロナ対応が「特に手厚く、きめ細やかだった」と振り返る。県対策本部を中心に、各病院の医師や関係機関のつながりが強く、ジャパンハートも県対策本部のクラスター支援班と綿密に情報交換していたという。こうした対応から、全国各地のクラスター支援201件中、57件が沖縄県内だったという。

 流行が一定程度収束した今、ジャパンハートのコロナ支援は「消極的関与」に切り替わるが、これまでの経験を踏まえて今後も沖縄に関わり続けるという。
 (嘉陽拓也)