「選挙の時だけ」でなく 西銘研志郎(八重山支局)


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written by 西銘研志郎(八重山支局)

 今年は八重山周辺の海水温が高くなり、サンゴの白化が進んでいる。そんな記事を書いた矢先の連続台風だった。私が担当する八重山は、知事選や統一地方選の雰囲気が本格化した9月になり、立て続けに台風に襲われた。

 サンゴにとっては救いとなるらしい台風だが、人間には大きな被害をもたらす。何より今回は、台風が続いたことで物流が滞り、生鮮食品の品薄が長期間続いた。スーパーに行ってもコンビニに行っても物がない。島の苦労を実感する日々だった。

 台風が来ると、さまざまな取材に追われる。被害状況を確認し、避難所の避難者の声を聞く。今回の台風では、突風にあおられてビニールハウスが倒壊した農家の男性の話も聞いた。男性はひどく落ち込んでいた。だが雨に打たれながら話を聞きに来た私を見て、「頑張りなさいよ」と畑の脇から無事だった作物をくれた。優しさが、染みた。

 選挙は終わり、各地の議会では9月定例会が始まっている。選挙期間中、熱心に台風被害を視察したり、有権者の声を聞いていたりした候補者たちも、当選に安堵(あんど)した表情を浮かべ新たな任期をスタートさせた。当選した皆さんにお願いしたい。選挙期間中の気持ちを忘れず、4年間過ごしてほしい。「選挙の時だけ」なんてことはないように。

(石垣市、竹富町、与那国町担当)


ゆんたくあっちゃー 県内各地を駆け回る地方記者。取材を通して日々感じることや裏話などを紹介する。