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「内助の功」「男泣き」…性差別につながる無意識の偏見、報道する側にも<取材ノート・新聞週間2022>3


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
新聞労連に加盟する記者たちがジェンダー表現について議論を深めたオンライン勉強会。画面上部の真ん中が筆者=2021年8月15日

 デジタル編集グループは、紙の新聞に掲載された記事の見出しをウェブ用に変更して配信するなどの業務をしている。

 瞬時に世界中に拡散するウェブ記事は、少しでも多くの人に読んでもらいたいと付けた見出しや記事の内容が、誰かを傷つけていないだろうか、交流サイト(SNS)ではどんな反応が来るのかと細心の注意が求められる。さらには、女性蔑視や性差別を助長したり、性被害の2次被害を生んだりしてはいないだろうかとジェンダーの視点で考えることは以前より多くなった。

 きっかけは、2020年から22年にかけて全国の新聞社の労働組合でつくる新聞労連のジェンダー関連のプロジェクトに参加したことだ。全国各地の新聞記者が、オンラインでの勉強会やメールのやりとりを通じ、日々の報道で気になる表現を共有していった。

 女性議員について見た目だけを取り上げる「美しすぎる市議」や、女性は男性を陰で支えるという性別役割を助長する「内助の功」、スポーツで男性の選手が勝敗に涙する様子を「男泣き」という表現などだ。「日本はジェンダー平等推進が遅れている」と報道する側にも、性差別につながる無意識の偏見が残っていると感じた。

 SNSなどで誰もが発信できる時代だ。メディアが自らの表現を見直すだけでなく、一般の読者も一緒に価値観をアップデートできるようなガイドブックが必要ではないかとの声も上がり、ことし3月の「失敗しないためのジェンダー表現ガイドブック」(小学館)の出版につながった。

 本紙のウェブ記事でも、スク(アイゴの稚魚)の水揚げを報じた記事の見出しが「スクール水着」と勘違いされたことがあった。記事の内容とかけ離れて性的な想像をかき立てることになると考え、過去に掲載された当該記事の見出しを修正した。また、日々の配信作業の中で「従業員の女を逮捕」など性別をあえて見出しに書く必要があるのかについて少しずつ議論が始まっている。

 こういう問題提起ができるようになったことは、一歩前進だと感じている。ジェンダーに配慮した表現とはどのようなものか。メディアの「失敗」を少しでも減らすために、試行錯誤の日々が続いている。

(慶田城七瀬)