「家族に笑顔を増やしたい」との思いで、県内で活動しているベビーシッターがいる。「ショウゴベビーシッター」施設長の新垣(しんがき)翔吾さん(36)=那覇市=だ。自身が離婚やうつ病を経験し、育児を誰かに頼ったり、息抜きしたりする時間が必要だと実感したことから、沖縄のママやパパを支援しようと2020年に活動を始めた。新垣さんは「子育ても大事だけど、夫婦の時間や一人の時間も大切。シッターを利用してもらうことで心に余裕ができると思う」とその意義を語る。
現在は月に30件ほどの依頼を受けて、0歳0カ月から15歳11カ月までの子どもを預かる。預かり時間は午前10時から午後10時まで。シッター利用の理由は仕事の人もいれば、美容室やエステ、夫婦2人きりでの食事や映画デートのためなどさまざま。一人で育児をする「ワンオペ育児」中の母親の話し相手を依頼されることもある。
新垣さんは「子どもができたら、夫婦2人の時間はなかなかつくれない。僕に子どもを任せて、たまには夫婦でゆっくり話をしたりおいしい食事をしたりして、お互いについて、子どもや将来について話せるような時間にしてほしい」と話す。
元々子どもが好きで、専門学校卒業後は県内の保育園で保育士をしていた。その後結婚を機に県外に出て、家族を養うため不動産業に転職。3人の子どもにも恵まれた。数年後沖縄に戻ったが、エリアマネジャーを任され多忙だった新垣さんと、専業主婦で3人の子育てを一身に担った妻との間にすれ違いが生まれた。次第に夫婦関係が悪化し、2019年に離婚。同じ頃にうつ病を発症した。子どもとは離ればなれになった。
仕事も辞め、半年ほど自由に過ごす中で、結婚していた時に家族にどんな支援が必要だったのか考えるようになった。周りに頼ることができず、息抜きの時間がなかったこと。仕事や子育てに追われ、夫婦共に心の余裕がなかったこと―。同じような状況で苦しんでいる家族は少なくないと感じた。結婚していた時に自分が利用したかったサービスとは何か考え、預かりの形態や時間を保護者がほぼ自由に決められるベビーシッターになることを決めた。
全国的にも珍しい男性のベビーシッターは「怪しまれるかな」と不安もあったというが、地道にSNSやチラシ配りなどで利用者を増やし、口コミでも評判が広がっていった。
今後はよりシッター事業を広範囲に展開するため、来年7月の開業3周年をめどに法人化する予定だ。新垣さんは「まだまだ沖縄はベビーシッターの認知度が低い。子育てを頼る選択肢の一つとして、保育園や児童館だけでなく、ベビーシッターがあるということを知ってほしい。夫婦の時間を大切にできるよう手助けしたい」と話した。
活動の詳細や申し込みはインスタグラムhttps://www.instagram.com/sho_gog/から。
(嶋岡すみれ)