那覇市長選 あす投開票 紙上討論で両候補がぶつけた質問は?


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(左)翁長雄治氏 (右)知念覚氏

 23日投開票の沖縄県那覇市長選は、22日に選挙戦の最終日を迎える。市長選に立候補している無所属新人で前県議の翁長雄治氏(35)=共産、立民、社民、社大、れいわ、にぬふぁぶし推薦=と、無所属新人で前那覇市副市長の知念覚氏(59)=自民、公明推薦=に、選挙戦の争点や公約の具体像、有権者に訴えたいことなどを聞いた。また相手候補への質問を募り、文書で回答してもらうクロス討論も実施した。質問と回答を紹介する。(文中敬称略)(’22那覇市長選取材班)

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翁長雄治氏 子育て日本一目指す

記者の質問に答える翁長雄治氏=20日、那覇市銘苅(喜瀬守昭撮影)

―選挙戦の争点は。

 「玉城デニー知事と力を合わせて子育て支援、市民生活の向上、経済の発展を進めるかどうかだ。子育て真っ最中の候補者として、子育て日本一の那覇市を目指す。故翁長雄志知事の遺志を受け継ぐのはだれか。辺野古の問題は本来、国防という全国の問題だ。沖縄、名護、辺野古の問題だと矮小(わいしょう)化する政府の姿勢を沖縄の政治家が許容しては将来に禍根を残す。政治家の一人として反対を訴える」

―重点公約、最も訴えたいことは。

 「見守り機能と子育て機能を一元化する。児童相談所の設置で、那覇市の子どもたちは那覇市で守る決意を訴えたい。所得向上、高校卒業までの医療費無償化など子育てにかかるお金の負担を減らす。芸能文化工芸で頑張る人や、所得はあってもきょうだいが多くて進学に二の足を踏む人が進学しやすい環境づくりを視野に入れ、給付型奨学金を拡充すべきだ」

―児童相談所の具体的な設置時期、予算は。

 「まずは設立準備室をつくる。県外の事例を視察し、状況を確認しながらより良い児相にしたい。那覇市の財政に無駄なものはないが、優先順位は何かを考える。県や国とも調整しながら予算を獲得したい。私が市議会にいる時も、野党議員から児相の設置の質問はあった。中核市の那覇が児相を持つ意義は伝わっている。与野党を問わず議会の皆さんの声を聞きながら設立する。任期中には実施設計などを終わらせ、4年後に児相の整備が進むところまではつくりたい」

―城間幹子市長が相手候補の支援に回った評価と影響は。

 「二度の選挙で市民の信頼を得た城間市長の政治姿勢が変節した。公約を破り、辺野古の埋め立てを承認した元知事を想起させる。相手候補の支援に回ったことは政治家の判断なので私から言うことではない。市民が最終的に判断する。効果は限定的ではないかと思う。全県に先駆けてジェンダー平等で果たした役割は評価するし、私も拡充する。私は政治姿勢が1ミリもぶれることはないと約束する」

―有権者へのアピールを。

 「父が那覇や沖縄の将来を熱く語り、実現する姿を見てきた。自民党だった父が辺野古新基地建設に反対し市民と共にオール沖縄をつくった運動、県民投票の実現、玉城知事誕生と、沖縄の民意を示す歴史的運動に関わったことは相手候補にない貴重な実績だ」

―知念氏から翁長氏へ

「お金に屈した」発言、謝罪は → 文脈と異なる切り取り

 知念 貴殿は「県民・名護市民はお金に屈したのかと、おそらく言われると思います」旨発言し、名護市議から謝罪と撤回を求められている。県議会でどう扱われたかではなく、あなた自身はひとりの政治家として、今後も謝罪するつもりはないか。

 翁長 ご指摘の発言は「県民・名護市民はお金に屈したのかと、おそらく言われると思います。そういうことは右からも左からも言わせない」という文脈で発言した。言葉の切り取りによる事実をねじ曲げた曲説は慎んでいただきたい。地方自治の立場から見て、アメとムチかのような政府のやり方はやめるべきだ。政府のいいなりではなく、市民との協働で夢のあるまちづくりを進めるのが私の立場だ。


知念覚氏 福祉と経済政策強化

記者の質問に答える知念覚氏=20日、那覇市牧志(大城直也撮影)

―選挙戦の争点は。

 「争点は各有権者が決めるが、次の那覇市長はコロナ禍を乗り越え、経済を回復させ、市民生活を守る行政実務能力が必要不可欠だ。即戦力の市長候補は誰なのかという点を訴えたい」

―重点公約、最も訴えたいことは。

 「福祉と経済政策の強化だ。コロナ禍や物価高騰などで影響を受けている市民や事業者に直接補助をする。医療・保健・福祉関連従事者の処遇向上や支援を通して各分野を充実させ、安心して住み続けられる街をつくる。主な公約として、短期的には子育て支援や市民協働、事業者へのDX支援、公園・道路整備、都市型MICE誘致を推進する。中長期的には那覇軍港の跡地利用やLRTの開通、密集市街地の解消、地域包括ケアシステムの構築、環境政策などに取り組む」

―有権者へのアピールを。

 「社会情勢はこれまでにないほど難しい。円安や物価高、燃料高騰、コロナ禍を乗り越えるには即戦力の市長でないといけない。私には副市長としての8年の実績と、行政職として38年培った実務能力がある。城間幹子市長が私を支持し、お墨付きを与えている」

―相手候補は「選挙では政治姿勢も問われる」と訴えているが。

 「政治家個々の政治信条はそれぞれ尊重されるべきだが、市政から離れた政治姿勢で対立構造を招くべきではない。対立による市政の混乱と停滞はあってはならない」

―新型コロナワクチン接種に慎重姿勢を示す参政党と政策協定を結んでいるが、ワクチン接種に対する考え方は。

 「私としては今後もワクチン接種を推進したい。だが接種の副反応で健康被害が生じている事実を踏まえると、ワクチン接種を選択しない方の気持ちも尊重しないといけない。参政党との政策協定に基づく具体的な取り組みは今後協議する」

―城間市長はオール沖縄の「再構築」を知念氏に期待しているが。

 「オール沖縄の動きの基本は『県民の心を一つに』、そして『県民は進んで基地を受け入れてはいない』ということだった。翁長雄志さんがずっと言っていたことだ。今、辺野古(移設反対)ではみんなの意思を統一できない。県民の心を一つにしないと基地問題には対抗できない。基地問題に対してみんなが合意できる次の材料が見つかれば、再構築を始めないといけない。政府とのすり合わせも同時並行でやらないといけない」

―翁長氏から知念氏へ

児相設置に否定的か → センター設け統括支援

 翁長 那覇市における児童相談所の設立が喫緊の課題だ。那覇市で見守り機能と子育て機能を一元化し、那覇市の子どもたちは那覇市で守る。予算の組み換えなどでこれをやり切るのが私の仕事だと考える。設置に否定的な知念氏はどう考えるか。

 知念 基礎自治体である本市においては、経済的な問題や育児の悩み、障がいなど様々な課題を抱えている世帯に対して、地域の中で安心して子育てができる包括的な支援を広げていくことが重要であり、母子保健部門と児童福祉部門を統括し一体的に相談及び支援を行う「こども家庭センター」を設置する。その上で、児童福祉司や児童心理司、医師・保健師などを有する専門的な機関であり措置的な介入機能をもつ児童相談所との連携を深めてまいりたい。さらに、「那覇市の子どもたちは那覇市で守る」に加えて、児童相談所の調整機能を活用した、近隣市町村と連携した子ども支援にも取り組みたい。