回復途中だった群落が被害…石西礁湖サンゴ白化「生態系へのダメージ大きい」 これ以上の衰退を食い止めるには


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サンゴ群体の白化が進んでいる日本最大のサンゴ礁「石西礁湖」=9月28日(環境省提供)

 白化現象が進む日本最大のサンゴ礁「石西礁湖」を巡り、環境省は現状を調査し、産官学民で構成する石西礁湖自然再生協議会で対策を進めてきた。サンゴ礁保全などを研究する、琉球大学理学部の中村崇准教授は「2016年の大規模白化から回復途中だったサンゴ群集が被害を受けている。生態系にとってのダメージも大きい」と指摘。これ以上の白化によるサンゴ礁生態系の衰退を食い止めるため、地球温暖化対策だけでなく赤土流入など陸域からの影響を軽減する視点などが重要課題となっている。

 環境省は05年から石西礁湖の調査を本格的に始めた。16年からはシュノーケリングによる目視観察で、生きているサンゴ群体が占める範囲(被度)と、群体のうち白化で死亡した群体が占める範囲(白化率)などを調査してきた。今回の調査は同省沖縄奄美自然環境事務所が9月24~29日に実施。石西礁湖内31地点の50メートル四方での被度と白化率を調査した。

 その結果、31地点平均で白化していない健全な群体は7.2%(前年比12.3ポイント減)にとどまり、一部が白化.死亡、色が薄くなっている群体は42.7%(同32.7ポイント減)、全体が完全に白化している群体は32.3%(同29.3ポイント増)、死亡している群体は17.7%(同15.7ポイント増)となった。

 大規模な白化現象が発生した16年の9~10月調査時は健全2.8%、薄色16.5%、白化23.0%、死亡57.7%だった。最終的に約70%が死亡した。

 サンゴ被度も16年は最終的に11.6%まで低下したが、17年以降は緩やかに回復し、健全な群体も増えつつあった。しかし、20年以降は色が薄くなった群体が増えるなど白化現象の進行が危惧されていた。

 石西礁湖の保全を巡り、国は06年、県や石垣市、竹富町のほか、地元住民、団体、研究者らと石西礁湖自然再生協議会を発足して、08年までに全体構想.実行計画を策定した。長期目標として37年までに1972年当時のサンゴ礁再生を掲げ、オニヒトデ駆除、群体修復、赤土や生活排水流入の減少などに取り組んでいた。

 環境省は今後、追跡調査を実施していくとともに、協議会などと情報を共有し、対策をさらに進めていく方針。
 (中村万里子、安里周悟)