日本人の健康は学校給食にあり 喜屋武ゆりか(沖縄大学健康栄養学部講師)<未来へいっぽにほ>


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
喜屋武 ゆりか(沖縄大学健康栄養学部講師)

 会話に困った時はぜひ「好きな給食は何でしたか」と尋ねてほしい。あげパン、わかめご飯などの人気献立、特別なデザート、苦手だった豆のサラダ…と話が弾み、懐かしさだけでなく、相手と精神的なつながりを感じられる。世代間や地域間でやや差があるのも面白い。脱脂粉乳給食の方には心から敬意を表し、給食の変遷を語らおう。われわれにとって馴染(なじ)みのある給食は世界的にみるとユニークで、その品質と実施率は世界最高水準である。

 「日本の給食は一から手作りで、野菜、魚、汁物がたっぷりの食事。給食は“子どもの健康”という、うらやましいほどの見返りがある」。ワシントンポストは日本の給食をこのように讃(たた)えた(「手作り」に感動しているのは、米国は給食に加工品を使用することが多いからだ)。

 この記事を支持する研究を紹介したい。日本の子どもの肥満率は他国と比べて低い。これは給食の賜物(たまもの)であることが証明された。東京大学を中心とする研究者らが、全国の中学校における給食実施率の増加に着目し、中学生の体格の推移を検討したところ、実施率が10%増加すると、肥満の男子が約5%減ることを突き止めた。別の研究では、給食が提供されている学校の小学生は、弁当持参の小学生よりも骨密度が高いことを明らかにした。日本人の食事で不足しがちなカルシウムが給食で補われ、子どもの骨の成長に寄与している。

 給食は万人に通じる思い出と、生涯に通じる健康を醸成してくれているのだ。世界は日本の給食に対し、高い評価と関心を寄せている。皆さまの関心はいかがだろうか。
 ※引用文献「J Public Health 2019▽J Nutr Sci Vitaminol 2016」