「普通」って何だろう 名嘉一心(中部報道グループ)


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written by 名嘉一心(中部報道グループ)

 普通とは? 辞書には「ありふれたもの」「特に変わっていないこと」などとある。

 ドラフト会議で沖縄大の仲地投手が指名され、母校の嘉手納高へ取材に行った。校長からコメントをもらい帰ろうとすると「名嘉さん、少し時間はあるか」と呼び止められた。

 同校は本年度から学び直しのコースを新設した。校長は写真や動画でその学びの様子を説明してくれた。生徒全員が黒板ではなく、タブレット端末に集中する姿は新型コロナ流行後、全県的に進んだICT教育のたまものだろう。ただ、それだけではなかった。生徒の中には防音のイヤーマフを装着した者、ペアを組み教え合う者、黙々と問題を解く者。初めて見た統一感のないクラスに「普通って何だろう」。思わずつぶやいていた。

 校長によると、このクラスには聴覚が敏感、一人では集中力が続かないなどの特徴のある生徒がいる。中学ではその性質に悩む子もいたという。イヤーマフやペアでの教え合いは、それぞれの才能を発揮するためだった。

 私を含め多くの人の共通認識が「普通」をつくるのであれば、一様に黒板に向かい、先生の解説に集中する従来型の授業は、まさに「普通」の授業であろう。一方で、「共通認識」をかさに着て、「普通」を押しつけていないか。多様性を認める社会はまだ道半ばだと実感した。

(北谷町、嘉手納町、読谷村担当)


ゆんたくあっちゃー 県内各地を駆け回る地方記者。取材を通して日々感じることや裏話などを紹介する。