自衛隊部隊や装備、輸送の民間船舶数を3倍に 南西諸島へ、政府が検討 台湾での事態緊迫化備え


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 政府は、有事の際に自衛隊部隊や装備を最前線に迅速に輸送するため、優先使用契約を結ぶ民間船舶の数を増強する方針を固めた。台湾での事態緊迫化などに備え、現在の2隻から6隻程度へ約3倍に増やす計画。自衛隊の輸送力不足を補う狙いだ。拠点の離島へ円滑に物資を運べるよう、仮設の桟橋や埠頭(ふとう)を設置する研究も進める。国家安全保障戦略と共に12月に改定する「防衛計画の大綱」などに民間輸送力の活用拡大の趣旨を盛り込む方向だ。関係者が27日、明らかにした。

 有事の際の民間船舶の運航は、自衛官に加え、予備自衛官が担う仕組みだ。危険な業務であるのは否定できないだけに、提供する民間会社側の理解や、予備自衛官の確保が課題となる。現場の状況によっては、派遣するか難しい判断を迫られる可能性もある。

 自衛隊は中国の軍事動向をにらみ、鹿児島県から与那国島まで千キロ以上にわたる南西諸島にミサイル部隊などを配備。有事では、本土の応援部隊を機動的に展開させる輸送力が鍵となる。北海道などの師団を九州に集結させた昨年の訓練結果を踏まえ、最低限6隻に拡充する必要があると判断した。

 自衛隊の輸送力は、海自の輸送艦「おおすみ」型(基準排水量8900トン)3隻、輸送艇(同420トン)1隻、空自のC1輸送機7機など。

 民間の2隻は、16年に特別目的会社「高速マリン・トランスポート」と契約した。北海道・函館港、兵庫県・相生港をそれぞれ拠点とする。次期「中期防衛力整備計画」の期間である23~27年度に契約更新を迎える。それに合わせて6隻程度まで増やす方針だ。桟橋や埠頭の研究は、大型輸送艦が接岸できる港湾施設がない離島に人員や物資を運ぶケースを想定している。


<用語>南西諸島の防衛

 中国は南西諸島から台湾、フィリピンを結ぶ「第1列島線」を越えて活動を活発化させており、自衛隊は抑止に向け、ミサイル部隊などの配備を進めている。沖縄県・与那国島に陸上自衛隊の駐屯地を開設し、情報収集を担う沿岸監視隊を配置。鹿児島県・奄美大島、沖縄県・宮古島にミサイル部隊を配置した。石垣島にもミサイル部隊を置く計画が進んでいる。防衛省は2023年度予算の概算要求で、戦闘継続能力向上のため弾薬庫拡充の関連費を盛り込んだ。
(共同通信)