挑戦する勇気 長嶺晃太朗(北部報道グループ)


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written by 長嶺晃太朗(北部報道グループ)

 今年2月、ウクライナ出身で恩納村に住む女性を取材した。ロシアのウクライナ侵攻により、故郷に住む両親や90代になる祖母らの身に危機が迫る。女性は「心配で涙が止まらない」と心境を明かした。女性の祖母は第2次世界大戦も経験しているため、人生で2度も大きな戦争に巻き込まれることになった。

 沖縄も77年前、悲惨な地上戦があった。もし沖縄が再び戦場になったら―。平和ガイドをしている私の友人が修学旅行生に問い掛けると、ほぼ全員が「戦争には行かない」という意志を示したという。

 ただ、実際にどうなるのだろうか。沖縄戦では、民間人の多くが自身の意思にかかわらず戦争に協力させられ、少年少女までもが戦場に動員された。ロシアのウクライナ侵攻では、戦場で戦う人の姿や「祖国を守るため」として故郷に戻る人の姿が報じられた。ウクライナの現状と沖縄戦を単純に同一視することはできないが、民間人が戦争に巻き込まれ、平穏な日常が生死と隣り合わせの悲惨な日常へと変貌した姿は重なる。

 名護市教育委員会は小中学生に向け、名護市の戦跡などを紹介するガイドブックを発行した。戦前からある市内10校に焦点を当て、学校周辺に今も残る弾痕、壕跡などの戦跡を、地図や当時の写真を交え、現在の様子と比較するように紹介している。編集した前市史編さん係の川満彰さんは「ここで実際に戦争が起こった。身近なところを見て考えて、自分ごととして戦争を捉えるようになれば」と思いを込める。

 ウクライナで今起こっていること、77年前に沖縄で起こったことは決して「人ごと」ではない。戦争につながる日常の変化を見逃さぬよう自分の胸に誓い、取材を続ける。

(名護市、本部町、今帰仁村担当)


ゆんたくあっちゃー 県内各地を駆け回る地方記者。取材を通して日々感じることや裏話などを紹介する。