復帰直後の沖縄〈50年前きょうの1面〉11月4日「沖縄で北ベトナム紙幣偽造」―琉球新報アーカイブから―


この記事を書いた人 Avatar photo 滝本 匠

 1972年5月15日に沖縄が日本に復帰してから今年で50年。27年間のアメリカ施政権下から脱して「祖国」の日本に戻るカウントダウンが進む中、本土との格差是正、自衛隊配備や米軍基地の取り扱い、ドル―円の通貨切り替え問題、初の知事選など、大きな歴史のうねりに翻弄される島の住民は山積する課題に直面する、そんな時代だった。復帰した後の沖縄の発展を展望しつつも、さまざまな制度変更にさらされる行政と政治。琉球新報の紙面もその歴史の一日一日を刻んでいった。

 

 日本「復帰」した1972年11月4日の琉球新報1面トップは、「沖縄で北ベトナム紙幣偽造/大量にバラまく/第7心理作戦部隊/精巧、本物ソックリ/9月までに1500万枚も」との見出しで、ベトナム戦争で沖縄・浦添市の米陸軍第7心理作戦部隊が北ベトナム紙幣を偽造して北ベトナム上空からまいている事実が判明したとの記事を掲載している。記事では『問題のニセ札は紙幣の部分の端に政治宣伝のメッセージが点いているが、それを切り離すと本物と区別できない紙幣として立派に通用するもので、きわめて巧妙な心理作戦だ」と記している。

 さらに第7心理作戦部隊第15心理大隊当局のコメントとして「札を印刷していることは知っているが、沖縄にはそれを印刷するだけの施設がないのでここでは印刷していない」と沖縄での印刷はしていないとの証言を紹介している。その上で沖縄の基地の位置づけとして「撤去が強く要求されながら復帰後も居座った第7心理作戦部隊がこのような巧妙な心理作戦を行っていることは、沖縄の基地が復帰して在日米軍の傘下に入ったとはいえ、そのワクをはみ出すものであると同時にベトナム和平に逆行するもので、現在開会中の臨時国会でも大きな論議を呼ぶことになりそう』と記している。

 年内の解散総選挙がささやかれる中、沖縄県内の動向として「中部地区交錯に懸命/解散総選挙に動く〝候補者〟」との見出しで伝えている。記事中では「自民党は、3人の公認を出す事を県連では決定しているものの、山川泰邦、桑江朝幸両氏のいずれにしぼるかは本部決定を待つ以外にないが、両紙とも出馬の意思は堅いため、どう決着がつこうとも同党にとっては中部が台風の目になるのはさけられない」と詳述している。

 

 

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 5月15日で復帰を迎えたが、沖縄を取り巻く状況は復帰して変わったこともあれば、変わっていないこともあった。琉球新報デジタルは、復帰を迎えた沖縄のその後の姿を琉球新報の紙面でどう記したか、引き続きお届けしていきます。