加藤登紀子「沖縄の人は音楽が故郷」インタビュー㊦ 12月に「ほろ酔いコンサート」


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「歌には大きな命を宿しながら束ねていく力がある」と語る加藤登紀子=10月13日、那覇市泉崎の琉球新報社(喜瀬守昭撮影)

 沖縄開催10回目の「ほろ酔いコンサート」に出演する歌手の加藤登紀子に、沖縄への思いなどをインタビューした。インタビュー後半では、音楽の視点から見た沖縄の社会や歴史などについても語った。(聞き手・田中芳)

―2015年に、名護市辺野古の新基地建設に反対する市民のテントなどを訪れた。

 「『ほろ酔いコンサート』の翌日、歌手の古謝美佐子さんと行った。1960年代に歌ってきた『美しき5月のパリ』という歌を、座り込みの活動をしている人たちが替え歌にして、沖縄を守ろうという歌にして歌ってくれた。彼らがいる辺野古には何度も行っている。日本の針路に疑問を持つ時、沖縄で何が起こっているか一番先に見逃してはいけないと思うので、私も沖縄のいろいろな所に行って見てきた」

―自著で「歌にはすべての国境を越えてしまうような力がある」と。

 「不思議なのは、歌手より歌が偉いということ。誰が歌ったかを乗り越えて、歌だけが生き抜いてくれる。『知床旅情』や『百万本のバラ』、沖縄の歌などもそうだ。どんな思いで作られたかというのを歌と一緒に受け止めて歌う。時代の中を歌が生き抜き、いろんな人の中を生き抜いていくことで、大きな命になる。歌にはその不思議さ、大きな命を宿しながらいろんな人たちの中を束ねていく力がある」

 「琉球から沖縄へ、戦争という歴史的な波があった。沖縄の人がすごく歌を大切にしてきたのは、島の外で出稼ぎしなければならない時、音楽が故郷だったからだと思う。音楽は誰にも邪魔されない故郷で永遠のもの。先祖とも未来ともつながれる。だから音楽が支えた」

 「歴史の中を生き抜いた人たちが残した曲に大きな力が宿されていると実感している。だから沖縄の歌が好き。沖縄の人たちがそうやって生き抜いてきたというのが分かる。遠い先祖も助けてくれるし、今頑張って生きれば未来につながるよという何か時間の流れのようなものが支えてくれると感じる」


 「ほろ酔いコンサート」は12月2日午後7時から、沖縄市のミュージックタウン音市場で開かれる。今回、コンサートの来場者からリクエスト曲を受け付ける。メールアドレスjigyou-k@ryukyushimpo.co.jp(ほろ酔いコンサート沖縄係宛)に、氏名とチケットの座席番号を明記の上、送信すると応募できる。

 

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