疲労感、味覚障害、睡眠障害…コロナ後遺症を地域で診察 診療所と重点医療機関が連携、沖縄県と県医師会が体制構築進める


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 新型コロナウイルスの症状が治まった後もけん怠感などが続く後遺症(罹患(りかん)後症状)に対応するため、沖縄県と県医師会は地域の診療所と重点医療機関などが連携する診療体制の構築を進めている。後遺症は症状が多岐にわたり、県の相談窓口には今年5月下旬から9月まで1150件の相談が寄せられている。特定の医療機関に専門外来を設置した場合、患者が殺到して通常医療が逼迫(ひっぱく)する恐れがあるとして、既存の地域医療で患者を受け止めることを目指す。

 厚生労働省の新型コロナ「診療の手引き」によると、後遺症の主な症状は疲労感や関節痛、息切れ、脱毛、味覚・嗅覚障害、睡眠障害などさまざまだ。時間の経過とともに改善する場合もあるが、長引くこともある。

 県医師会は今年2月、後遺症対応が可能な診療所を内科一般、耳鼻咽喉科、精神科、皮膚科ごとに調査した。県の相談窓口は医師会のデータを基に、かかりつけ医がいない相談者などに受診先を案内している。

 しかし、後遺症は最適な治療方法が確立されておらず、症状が改善しない患者が複数の医療機関を渡り歩くケースもあるという。県医師会の田名毅副会長は「あちこちの医療機関で検査して異常がないと言われると、解決策が見えず、患者は精神的につらい状況に追い込まれる。県外の病院を頼る事例も聞くので、こうした事態は避けたい」と説明する。

 症状が重く、高度な検査などが必要になると、開業医では限界もでてくる。後方支援を探るため、県医師会では10月末から県内の救急告示病院に後遺症対応のアンケートを始めた。

 紹介窓口の有無をはじめ、呼吸器内科や循環器内科、耳鼻科、皮膚科、精神科、リハビリテーション科で対応可能か確認中だ。病院側の支援体制が構築されることで、診療所が後遺症を見るハードルが下がり、協力医療機関が増えることを期待している。

 こうした取り組みと並行して、後遺症の知見を情報共有する研修会なども県と企画しており、田名副会長は「うまく動き出せば県の相談窓口からスムーズな患者対応ができる」と語った。 
  (嘉陽拓也)