【深掘り】与那国での米軍訓練は初 自衛隊と共同で「慣れ」促進狙いか 日米共同演習


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 自衛隊と米軍が参加する日米共同統合演習「キーン・ソード23」が10日から本格化し、沖縄県内各地で訓練が展開される。演習の具体的なシナリオは明らかにされていないが、武力攻撃に至らない「グレーゾーン事態」から、外国の武装勢力などから日本が攻撃を受けた「武力攻撃事態」までの対応を想定し、日米の連携を確認するとみられる。

民間船に車両を積み込む米軍関係者ら=4日、那覇軍港(米軍サイト「dvids」より)

 県内で実施される演習の中でも、日米が戦略的に訓練を練り上げたとみられるのが台湾に近い与那国島で実施される一連の訓練だ。県が9日に与那国空港の使用申請を許可したことで、防衛省統合幕僚監部は演習の一環で、陸自最新鋭の16式機動戦闘車(MCV)を公道で使用することになる。関係者によると、与那国島に運ばれるMCVは2両で、島がグレーゾーン事態となったと見立て、機動力に優れたMCVを、武力攻撃を受ける前に展開することを想定しているという。

実績づくり
 

 さらに、防衛省が県などに示した資料によると、与那国島では10日以降、自衛隊北部方面隊40人と、米海兵隊員40人によって「国民保護」を念頭にした「日米連絡調整所」の設置訓練が予定されている。米軍は初めて与那国島で訓練を実施することになる。

 与那国町では2007年6月、海軍の掃海艦が祖納港に寄港し、町を含め、住民からは激しい反発も上がった。一方、国境の島では台湾有事を懸念し、自衛隊の駐留に理解を示す住民も多い。

 防衛省関係者は、米軍が訓練する意図について、「何か起これば米軍が介入するというプレゼンス(存在感)を示すとともに、過去に反対があったことを踏まえ、自衛隊と共同で訓練することで『米軍への慣れ』を促す狙いがあるのではないか」との見方を示す。米軍が展開した実績をつくることで、今回の演習の終了後も断続的に訓練を重ね、展開する可能性は否定できない。

全体像見えず
 

 米軍サイト「dvids」に9日公開された動画には、那覇軍港に停泊した、日本の民間フェリー会社の船舶に、米軍車両を登載する様子が映し出された。詳細は不明だが、動画は4日に撮影され、その説明によると、キーン・ソードの一環で第3海兵遠征軍と、自衛隊による「2国間野外訓練演習」を実施するとし「日米同盟の相互運用性と戦闘準備態勢を強化する」と記された。この民間船は8日、門司港(山口県)に到着した。

 この海兵隊の移動について、県は防衛省、自衛隊から、詳細を明かされていない。有事を想定し、民間の輸送力なども複雑に絡み合わせた大規模な演習は、どこまで広がっているのか全体像が見えにくく、県内では住民生活への影響に懸念も高まっている。

(池田哲平、明真南斗)