変異するインフルに対応「万能ワクチン」を開発 マウスで実験 沖縄産カイコを活用 国際学術誌に掲載 生物資源研の根路銘氏


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 【名護】根路銘生物資源研究所(沖縄県名護市)の根路銘国昭所長(83)が、A型インフルエンザウイルス表面のM2タンパク質など複数の遺伝子から構成した物質「キメラサイトカイン(妖怪サイトカイン遺伝子)」の構築に成功し、インフルエンザウイルスHA遺伝子を組み合わせて生成した「万能インフルエンザワクチン」を開発した。キメラサイトカイン構築と「万能ワクチン」開発はいずれも世界初と発表した。基礎研究では致死量のウイルスに感染したマウスの生存率が100%上昇した。根路銘氏は「毎年変異するインフルエンザウイルス全てに効果を発揮する万能ワクチンだ」としている。

「万能ワクチン」の論文を発表した根路銘国昭氏=9日、名護市の根路銘生物資源研究所

 ワクチンの効果を実証した論文「キメラサイトカインを発現する万能インフルエンザウイルスワクチンの可能性」が7日、国際学術誌「ライフ・サイエンス・アライアンス」に掲載された。

 根路銘氏によると2017年、「万能ワクチン」の基になる活性物質、キメラサイトカインの構想を思い付き、18年から国立感染症研究所時代の共同研究者や弟子の協力を得ながら根路銘生物資源研究所でキメラサイトカインの構築に取りかかった。M2タンパク質と、ウイルスを細胞から切り離す酵素の一つであるインフルエンザA型ノイラミニダーゼ、細胞間で情報を伝達している酵素のサイトカインという物質の一つであるインターロイキン―12などの遺伝子を量子力学で計算して組み合わせた。四つの機能性遺伝子の設計理論を確立した上で、世界初の「万能ワクチン」を開発した。

 「万能ワクチン」の合成には沖縄産カイコを活用した。「万能ワクチン」をマウスに投与すると保護免疫が強化され、ウイルスが抗体の表面で排除されることが確認されたという。根路銘氏は「沖縄産カイコは副作用の心配がない。メーカーが実用化に乗り出せば3年ほどで使用できる。新型コロナウイルスにも応用できる技術だ」と述べた。

(松堂秀樹)

 

 


【識者談話】沖縄産カイコを活用したインフル「万能ワクチン」の将来性とは? 藤田次郎氏(おもと会グループ特別顧問、琉球大名誉教授)