SUP、荒木が最年少2冠「次は五輪で金」 橘は4位入賞「各国の選手とこげたことを誇りに」


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 ISA(国際サーフィン連盟)の世界選手権大会が10月28日~11月6日、米自治領プエルトリコのサンフアンで行われ、SUP(スタンドアップパドルボード)の男子テクニカルとディスタンスレース決勝で、名護市の荒木珠里(16)=NHK学園高1年、KANAKA沖縄所属=が2冠を達成した。大会で同時優勝は史上初で、最年少の金メダリストが誕生した。中距離のテクニカル(約5キロ)は26分41秒、長距離のディスタンス(約18キロ)は1時間32分15秒でゴール。女子のジュニアテクニカルは、名護市出身の橘ゆうが30分39秒で4位入賞するなどした。荒木と橘が参加したチームリレーは13分28秒で銀メダルを獲得。日本は総合で4位に入った。


沖縄で鍛えた力発揮 荒木

 ついに16歳のパドラーが突き抜けた。荒木珠里は世界で名だたる憧れの選手たちを抑え、史上最年少で前人未到の2冠を達成。沖縄の海で鍛える力をいかんなく発揮し、どんな状況にも適応する強さを見せた。

SUPのテクニカルレースでターンする荒木珠里(ISA提供)

 テクニカルは荒波がコースを洗う得意な状況。先頭集団で波と風を読み、素早いターンも決まった。2周目で世界最速と評されるノイック・ガリュー(ニューカレドニア)と一騎打ちになるが、波でノイックが落水。隙を逃さずリードを約75メートルも広げ、頂点をつかんだ。

 国際オリンピック委員会(IOC)の委員が視察に訪れ、ISAのアギーレ会長が6年後のロス五輪への推薦を表明し、一気に機運が高まったテクニカル。優勝インタビューで荒木は「(ロス五輪で)金メダルがほしい」と早くも次の大きな目標を掲げた。

 続くディスタンスもレースを引っ張り終盤でスパート。1位でゴールすると海へ振り向き一礼した。偉業達成を「うれしい」と喜びつつ、「みんなに感謝したい」と競い合った選手や支えてくれた家族、海への気持ちを強調した。

 周囲より体格が劣りジュニアへの出場もできるが、あえて世界のトップ選手に食らい付く。「いつの日か“ウオーターマン(海人)”と呼ばれる人間になれたらうれしい」とこれからも挑戦し続ける。

(金良孝矢)


父と二人三脚 喜びかみしめ

 荒木珠里はディスタンスでゴールすると、父の汰久治さんと抱擁し喜びをかみしめた。これまで二人三脚でやってきた道のりを振り返り、これからロス五輪へ向けて大きなビジョンを描く。汰久治さんは「僕らの挑戦はようやく始まったばかり」と前を向いた。

父の汰久治さん(左)と二人三脚でやってきた荒木珠里(提供)

 沖縄の漁師一家の孫として生まれ、幼い頃から海に慣れ親しんできた荒木。オーシャンアスリートとして世界の各大会で活躍してきた汰久治さんの教えと支援を受けながら、世界の過酷なレースでの苦難も乗り越えてきた。

 2人で「必ず突き抜けられる」と信じてやってきたことを証明してみせた。それでも汰久治さんは「決して過信せず、満足することなく、感謝を忘れずに精進を重ねる」と身を引き締めた。

(金良孝矢)