集落を悪霊から守って 「イシガントウ」に肉供え手合わせ 宜野座・惣慶で村行事「シマカンカー」


社会
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惣慶区の行事「シマカンカー」で、三つあるイシガントウの一つ「久志岳の返し」で手を合わせる区民ら=10月19日、宜野座村内(提供)

 【宜野座】宜野座村惣慶区で10月19日、区長、行政委員、区の関係者により「シマカンカー」が催された。「シマカンカー」は、惣慶の集落の東西北3カ所にある石灰岩の獅子「イシガントウ」に牛肉または豚肉を供え、災いをもたらす悪霊が集落内へ侵入することを防ぐために行われる行事。イシガントウに牛汁を供え、手を合わせた。

 惣慶のシマカンカーは1911年まで旧暦9月5日に行われていたが、一度途絶え、85年に復活し、現在まで続いている。
 シマカンカーの後、宜野座村立博物館の学芸員田里一寿さんによる講話が惣慶区の公民館で行われ、紙芝居「惣慶のイシガントウ」を実演し、過去の調査で撮影した写真を基にイシガントウやシマカンカーについて解説した。区長、行政委員、惣慶区の子どもたちが地域行事について知識を深めた。
 田里さんは「西にある『恩納岳の返し』、北にある『久志岳の返し』、東にある『安部崎の返し』と呼ばれるイシガントウが、東西北の方向から吹く悪い風から集落を守っている」と説明。また、イシガントウは昔の集落境界に安置されており、時代が進むにつれ、人口増や移住者によってイシガントウの外側にも集落が広がっていったため、一時期はイシガントウの位置を動かしたことがあったが、あまり良いことが起こらなかったので、再び元の場所に戻したという。

 シマカンカーについては、イシガントウに牛肉を供えることで力を与え、霊的に集落を悪霊から守ってもらうように感じるが、行事の際は供えた肉を「一口食(チュクチクェー)」といって子どもたちに一口ずつ食べさせていたという。「かつて栄養状態が乏しかった子どもたちに牛肉を食べさせることで、元気になってもらうという現実的な意図もあったのでは」と田里さんは推察した。
 (池辺賢児通信員)