〈131〉新型コロナウイルスと大動脈瘤 健診控えず早期発見を


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 新型コロナウイルス感染症が収まらない状況の中で、重症化のリスク因子についてのさまざまな情報や、生活習慣病との高い関係性が報告されています。

 血栓症に伴う心筋梗塞、脳梗塞、肺塞栓(エコノミークラス症候群)の対策が重要であるともいわれています。また新型コロナウイルスへの感染を危惧して医療機関への受診を控える傾向にあることも各種メディアで取り上げられています。

 がん検診に関しても、2021年に実施された公益財団法人日本対がん協会によるアンケート調査の結果、新型コロナウイルス流行前の2019年を10・3%下回り、コロナ禍の影響が続いていることがわかっています。がん検診による早期発見が遅れることで、結果的に進行がん患者数も増加していくのではと懸念されています。

 同様に新型コロナウイルス感染症の蔓延(まんえん)で、大動脈瘤(りゅう)の発見・治療においてもすでに日常診療で影響が出てきています。大動脈瘤とは、大動脈の一部が拡大して瘤=「こぶ」を形成する病気で、ほとんどが無症状で知らないうちに瘤が大きくなり、ある日突然破裂(体内で多量出血する)し、死にいたる怖い病気です。

 その多くは動脈硬化が原因ですが、高血圧、喫煙、糖尿病、高脂血症、肥満などは動脈瘤の促進因子(できやすくする)となります。高血圧のことはサイレントキラー(沈黙の殺人者)と喩(たと)えられますが、大動脈瘤はまさにサイレントボンバー(沈黙の爆弾)と言ってもいいでしょう。

 自覚症状がほとんど無いので、大動脈瘤の多くは健康診断(レントゲン)などで偶然発見されるか、がんの精密検査(超音波検査、CT検査)で指摘されるため、健康診断・がん検診受診者数の減少は、大動脈瘤診断へ大きく影響します。

 その治療法は残念ながら効果のあるお薬は無く、外科的手術(開胸・開腹手術やカテーテル治療)が唯一の治療法です。早期発見が破裂予防につながりますので、特に高血圧・心血管疾患をお持ちの方は早めに検診を受けるよう心がけましょう。

(永野貴昭、琉球大学病院 外科)