夫は広島で被爆、96歳のカジマヤー迎えた太田さん、人生を本に 戦前・戦後の暮らし記す 沖縄市


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記念誌を手に笑顔を見せる、太田康子さん=10月19日、沖縄市宮里

 【沖縄】沖縄市宮里に住む太田康子さん(96)がカジマヤーを迎えたことを記念して、家族が太田さんの人生をまとめた記念誌を自費出版した。戦前の生活が分かる思い出話や、家族や親族を沖縄戦で亡くした体験などをつづった。記念誌は広島大学の嘉陽礼文研究員のインタビューで構成する。

 太田さんは1926年10月に本部町伊豆味で生まれ、琉球藍農家で育った。18歳のころに沖縄戦を体験し、兄2人とおい4人を亡くした。夫の故・守福さん(享年91)は広島の工場で勤務中に被爆した。インタビューは戦前の食事や衣服などの生活様式から、沖縄戦、戦後の暮らしまでを幅広くカバーする。太田さんが守福さんから耳にした被爆体験も記した。

 嘉陽研究員が太田さんと初めて会ったのは2018年。広島の平和記念式典に参加した太田さんから、沖縄戦の体験や守福さんの被爆について話を聞いた。翌年、沖縄に太田さんを訪ね、改めて取材し、論文をまとめた。

 嘉陽研究員は「つらい気持ちを抑えて話してくれ、申し訳なくありがたい気持ちだ。戦後生まれの世代に読んでもらい、沖縄の民間人が実際にたどった歴史を知ってほしい」と話した。

 太田さんは「戦争はみんなが苦しむだけ。二度と戦争をしてはいけない。子どもたちには一生懸命勉強して、いい人生を送ってほしい」と語った。

 記念誌は150冊出版した。教育機関などに寄贈する予定。

(石井恵理菜)