【深掘り】戦闘機のローテーション配備、「常駐が抑止力」に変化も 米軍嘉手納基地、日米それぞれの思惑とは?


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米軍嘉手納基地へ飛来する米軍のF22ステルス戦闘機=4日

 米空軍嘉手納基地所属のF15戦闘機を退役させ、F22戦闘機のローテーション配備に切り替える米空軍の動きを巡り、固定された基地に米軍部隊を常駐させるという従来の安全保障や抑止力の考え方に対し、日米双方からさまざまな意見が上がっている。部隊のより柔軟な運用を進める米側の戦略に対し、米軍の常駐が「抑止力」と説明してきた日本側からは、機体を更新させ新たな常駐部隊の配置を求める意見も上がる。在沖米軍基地の在り方が改めて問われている。

 沖縄に米軍基地が集中する脆弱(ぜいじゃく)性はかねてから指摘されていた。米政権で普天間返還合意を主導したジョセフ・ナイ元国防次官補は2014年の論文で「中国のミサイル技術が発達し、沖縄の米軍基地は脆弱(ぜいじゃく)になった」と指摘。米有力軍事シンクタンク「ランド研究所」も15年9月に公表した報告書で、中国のミサイル能力が急速に高まっていると指摘し「中国の近くに配置された米軍の固定基地は、防御を賄えなくなるだろう」と分析していた。

 国防総省は10月末、安全保障政策の指針となる「国防戦略」を発表し、軍備を増強する中国への対応を優先課題と位置づけ、同盟国との連携を強化して抑止力を高める姿勢を打ち出した。常駐のF15を退役させ、アラスカ州に配備されているF22を半年ごとのローテーション展開に切り替える計画は、国防戦略の公表と同時期に重なった。中国への対応に関し、今後の米戦略を映し出しているとも言える。

 ローテーションへの切り替えを念頭に、スティーブ・ガンヤード元国務次官補は星条旗紙に「再配置のオプションを保持する可能性のあるローテーション部隊を持つ方が、少なくとも家族と一緒に恒久的に拠点を置く部隊よりもはるかに良い」との見解も示した。

 一方、F15の退役は米軍の関与低下を印象付けるとの指摘も日米双方の議会から上がる。日本政府は、米側はF15戦闘機は約2年かけて退役させ「より高い能力を持つ恒久的な部隊に置き換えるため、さまざまなオプション(選択肢)を検討している」(浜田靖一防衛相)などと説明する。

 野添文彬沖縄国際大准教授は「中国の台湾侵攻が数年以内に行われると、米国高官から発言がなされている。こうした中、ローテーション配備の計画が進んでいたのは、米政府内で中国への抑止とのバランスで、うまく戦略としてまとまっていない形とも言えるだろう」との見方を示す。米国内にもさまざまな意見がある中で、嘉手納基地に駐留する部隊を巡る日米双方の動きや両政府高官の発言に、今後も注目が集まる。

(池田哲平)