沖縄県、珊瑚舎スコーレの夜間中学認めず「設置基準満たさず」 再審査を求め県議会に陳情へ


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珊瑚舎スコーレ夜間中学校の英語の授業風景。仕事を終えて駆け付ける人もいる=9月12日、南城市の珊瑚舎スコーレ

 南城市で珊瑚舎スコーレ高等部を運営する学校法人雙星舎(そうせいしゃ)が、私立の夜間中学校開設に向けて県に設置認可を申請したことを巡り、校舎や運動場面積の基準を満たしていないとして、県が設置を認めなかったことが21日までに分かった。雙星舎代表でNPO法人珊瑚舎スコーレ代表も務める星野人史さんは、設置基準は地域の実態や事情を考慮する例外が設けられているとして、再審査を求める決議を採決するよう県議会への陳情を22日に提出する。

 県内では戦中・戦後の混乱や、中高校生らの若年出産などを背景に、義務教育の機会を十分に確保できず、大人になってから学び直しを望む声があり、夜間中学校の必要性が指摘されている。

 NPO法人珊瑚舎スコーレは初等部と中等部のフリースクール、自主夜間中学を運営する。自主夜間中学は、活動の充実や基盤の安定などを目的に、学校法人雙星舎を設置主体に「珊瑚舎スコーレ東表(あがりおもて)中学校」として設置できるよう、今年3月末に申請していた。

 一方、県は9月30日付で「中学校設置基準の第8条を満たしておらず、妥当であるとは認められない」と通知。雙星舎は10月19日に文書を受け取ったという。同8条は「校舎および運動場の面積は、法令に特別の定めがある場合を除き、別表に定める面積以上とする」と記し、生徒数40人以下の場合は校舎面積を600平方メートル以上と定める。一方で「地域の実態その他により特別の事情があり、かつ、教育上支障がない場合は、この限りでない」とも記す。

 星野さんは「判断の根拠となる8条は学齢期の子どもを対象に定めたもので、就労者や高齢者を対象にした夜間中学の設置基準とするのは疑問がある」と指摘。「義務教育未修了者たちの学ぶ権利をいかに保障するかを考える必要がある」と強調した。

 今回の申請について県総務部総務私学課は「県内には義務教育未修了者など夜間中学校を必要としている人たちが多くいる。必要性そのものに疑問を挟む余地はない。今回はあくまで審査の結果、関連法の必要な基準を満たしていなかったということだ。必要性に関しては十分認識している」とコメントした。

 文科省は各都道府県に公立夜間中学校を1校は設置するよう促している。県内では現在、県教育委員会義務教育課が各市町村に公立夜間中学校設置の検討を促しているが、めどは立っていない。(吉田早希、嘉数陽)