罰則なく「法の限界」…沖縄県ヘイト条例骨子案 県民を標的にした「沖縄ヘイト」対策も不十分


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 差別的言動(ヘイトスピーチ)に対して、玉城デニー知事が規制条例の検討を明言して約2年2カ月。県は先進事例を参考に議論を重ねてきたが、県内市街地における実例が少ないため、表現の規制や罰則まで踏み込むための論拠をまだ詰め切れていないという。ただ、市街地だけでなくインターネット上には県民を標的にした「沖縄ヘイト」も散見されており、識者からは現状認識の「不十分感が否めない」などの指摘も上がる。

 沖縄弁護士会所属で、条例の検討委員会にも加わった白充(ペクチュン)弁護士は骨子案について「刑事罰はおろか行政罰すらないことはいかがなものか」と指摘する。ただ、国のヘイトスピーチ解消法そのものに規制が無く、対象が日本に住む外国人やその子孫などに限定しているほか、インターネット上のヘイトスピーチに触れていないため、同法の範囲内でしか条例を制定できない「法の限界」も指摘した。

 一方、法の付帯決議では、地域の実情に沿った形で実効性を持たせることもできるとされていることから「国も県もより実効性を持たせる努力が必要だ」と強調した。

 ジャーナリストの安田浩一さんは、全国的に沖縄に対するものを含むヘイトスピーチが深刻化しているとし、「県民が差別される現状への配慮が必要だ」と指摘。今後の修正に向けて「沖縄に対する差別的言動を許さないということを県自らが主体的に示すことのできる機会であり、その姿勢を盛り込むべきだ」とした。

 また、在日コリアンの子孫らが暮らす京都府宇治市の「ウトロ地区」で、韓国人への敵対的感情を持つ男が起こした放火事案を挙げ、「巧妙な形で市民に(ヘイトスピーチが)浸透している。行政はもっと危機感を持つべきだ」とも話し、三重県のインターネット監視によるヘイトの未然防止の取り組みなども参考にするよう勧めた。
 (嘉陽拓也、中村万里子)


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