「喜劇 人類館」 伊佐尚記(那覇・南部班)


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written by 伊佐尚記(那覇・南部班)

 舞台「喜劇 人類館」を5日に那覇文化芸術劇場なはーとで鑑賞した。「人類館」は沖縄の演劇が生んだ代表的な戯曲だ。私はウチナーンチュへの差別と、ウチナーンチュ自身に潜む差別意識を描いた悲喜劇だと考えている。過去に演劇集団「創造」による上演を見たが、今回は作者の知念正真さんの娘・あかねさんと、沖縄をテーマにした作品などに関わってきた佐藤尚子さんの演出だった。

 終演後のトークで、あかねさんは佐藤さんに「女性の目線で人類館をつくりたい」と話したことを明かした。今回の演出では、最終盤で差別される側から差別する側へと変貌する沖縄の男を、沖縄の女が背後の高い所から見詰めている様子が印象的だった。女は、差別される者からさらに差別される者を象徴しているのか。それとも差別を根絶できず右往左往する人類の歴史を見てきた神のような存在なのか。想像が膨らんだ。

 「人類館」は、あかねさんが母のおなかの中にいる頃、正真さんが「この子に何かを残したい」と書き始めたという。私事で恐縮だが、3月に次男が生まれた。私だったらこの子に、そしてこの子たちの世代が生きる未来の沖縄に何を残せるだろうか。少なくとも今より差別のない世界にしたい。もちの妖精のような赤ちゃんに癒やされながら、そんなことを考えている。

(那覇市担当)


ゆんたくあっちゃー 県内各地を駆け回る地方記者。取材を通して日々感じることや裏話などを紹介する。