県立博物館・美術館は29日、戦前に武道の演武場として使われた「武徳殿」=那覇市泉崎=の開殿式の式次第など関係資料を公開し、「戦前の沖縄の武道界や社会状況を知る第一級資料」と説明した。開殿式は1939年6月18日に開かれ、大日本武徳会の林銑十郎会長(1937年に総理大臣、陸軍大将)が来賓出席した。資料には旅行日程があり、県学務部長が林会長に対して、中学生や学校長に講話を依頼する記述もあった。
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同館学芸員は国民精神総動員体制下の時代背景を踏まえ「忠君愛国の思想を醸成しようとした当時の教育関係者の意識が読み取れる」と分析した。
関係資料は全部で14点あり、収集家の佐藤茂さん=札幌市在住=が10月25日に県に寄贈した。佐藤さんは趣味で空手に関する資料を収集しており、東京の古書店から届いた目録集の中から同資料を見つけた。
関係資料のうち式次第には県立第一中、二中、沖縄師範学校など学生による団体演武に加え、戦前から戦後にかけて沖縄伝統空手の流派を擁立した喜屋武朝徳、知花朝信、宮城長順、長嶺将真ら22人の名前と演目が記載されている。
資料について詳細を説明した県立博物館・美術館の宮城修学芸員と園原謙学芸員は「戦時下の武道界の人材を知る上で第一級資料」と話した。
また、林会長の日程は視察地に沖縄神社拝殿(旧首里城正殿)や尚侯爵家なども記されており同館は「当時の沖縄の接遇状況がうかがえる」と話した。
武徳殿は沖縄戦の戦火を逃れ、59年から県警の武道場になった。85年の県庁の新庁舎建築に伴い、89年に解体された。
関係資料は来年4月29日から6月4日まで同館の新収蔵品展で公開される。
(高江洲洋子)