沖縄差別の視点不足 県ヘイト条例案 関係者ら疑問の声


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県庁

 沖縄県が年度内の制定を目指す差別的言動(ヘイトスピーチ)を規制する条例案の骨子について、反差別に取り組んできた関係者からは、罰則がないことや、県民に向けられる差別に対処する視点が不足している点について疑問の声が出ている。

 沖縄カウンターズは骨子案が判明した11月29日、条例に対する要請書を県に提出した。要望は(1)差別事案発生時に「非難声明」を県(知事)が発する制度(2)被害者支援制度(3)県人権委員会の設置―の3点を条例に盛り込むことだった。

 カウンターズのメンバーの一人は、ヘイトスピーチ解消法が制定された後も那覇市役所前でヘイトスピーチが行われていたことを指摘。「条例が実効性のあるものになっているのか。表現の自由は無制限ではなく、差別する自由はない。反差別の土台ができていない」と疑問を呈した。

 別のメンバーは「案にあることはすべて実現していただきたい」と、人権委員会の設置などに期待する一方、差別的言動に対応する対象が「本邦外出身者」とされていることを念頭に「沖縄や沖縄の人に対する差別にどう対応するのか見えない。うまく対処するアイデアはないのだろうか」と話した。

 県司法書士会の安里長従さんは、骨子案で、外国人などに対する差別的言動が行われた場合、氏名公表などの措置の対象を取るとしていることについて、「沖縄の人々に向けられる差別的言動にも同様の措置を講じるべきだ」と指摘。その根拠として、世界人権宣言7条が差別及び差別扇動からの「平等」な保護を受ける権利を保障していることを挙げた。(稲福政俊、中村万里子)