【あす判決】人工中絶の配偶者同意に医師の裁量はどこまで? 注目の控訴審 福岡高裁那覇支部


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福岡高裁那覇支部(資料写真)

 女性が人工妊娠中絶をする際に法律上必要とされる「配偶者同意」。離婚していたり、夫にドメスティックバイオレンス(DV)を受けたりしている場合は本人の同意のみで中絶できるが、配偶者同意なしで手術すると医師が判断するには、どの程度の確認が必要か―。こうした点を争い、男性が妻だった女性の中絶を巡り、県内の医師の責任を問う訴訟の控訴審判決が5日、福岡高裁那覇支部で言い渡される。配偶者同意に関する訴訟は全国的にも珍しく、判断に注目が集まる。

 「DVはしていない。当時妻だった相手が不倫し、虚偽DVによって自分の子どもを殺された」。10月、控訴審が結審した後に、原告の男性はこう強調した。

 一審判決によると、2017年、男性の元妻は中絶を希望して県内の医療機関を受診した。「離婚協議中で、妊娠しているのは婚外子」などと語ったが、医療機関側は配偶者同意が必要だと説明。元妻は「同意書にサインは得られない。DVのような行為もあった」と話した。

 2日後、再び来院し「元夫が生活費を入れてくれず、けんかばかりしていた。1カ月前に離婚した」と説明。医師は本人の同意のみで施術した。だが、その時点で離婚はしていなかった。男性はその後、自身の同意を得ずに中絶されて精神的苦痛を受けたとして、医師に慰謝料200万円を求め提訴した。

 男性はDV行為を否定。離婚したかどうかの元妻の説明は変遷しており、医師側は真偽を確認する義務があったと主張する。一方、医師側は、元妻からDVの申告もあり、男性に問い合わせるとさらなる加害を受ける可能性があったとし、本人の説明を信用した判断は正当だと反論した。

 昨年11月の一審判決は「母体保護法上、厳格な証明や確認の手続きが定められているものでもない」とし、医師側が男性の同意を得なかったことに過失は認められないと判示。請求を棄却した。

 男性は控訴し、医師による元妻への聞き取りが不十分で、産婦人科診療のガイドラインに反するなどとし、改めて医師側の過失を訴えた。医師側は、中絶の際に配偶者の同意を要件とするのは、女性の自己決定権などから憲法に反するという点も主張している。