【深掘り】知念那覇市長の政府直接要請 沖縄県の頭越しに交渉の思惑とは


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那覇市立病院(資料写真)

 松野博一官房長官と面会した知念覚市長は、那覇市立病院の建て替えに国の財政支援を求めた一方、従来那覇市が問題視してきた那覇軍港でのオスプレイの離着陸については「議論を深めましょう」と呼び掛けるにとどめた。だが、懸案を置いて県の頭越しに国と自治体が直接予算を交渉する流れに「露骨すぎる」(沖縄県関係者)と警戒感が広がる。

 「那覇市長選で生まれた新たな潮流を未来へ確実につなげるためにも、特段のご高配をたまわりたい」。知念市長は病院建て替えへの支援を求めた際、念を押した。

 那覇市幹部は「政治姿勢で(国との)対立を際立たせないというメッセージだ」と「潮流」の意味を解説する。

 建て替え事業費はほとんどを起債で賄うことが見込まれている。当て込んでいたハード交付金の減額が続き、病院建設にかかる来年度の交付額は「計画額の6割減」(知念市長)となる見通しが県から伝えられるなど、厳しい現状を訴えた。同幹部は今後の要請に向け「官房長官に仁義を切った事実は重い」と、今後の予算確保に期待を寄せた。

 「知念氏を取り込む狙いだろう」。知念市長と松野長官の面会に、県幹部は警戒感を示した。

 松野長官は4日に松本哲治浦添市長、松川正則宜野湾市長とも面会するが、玉城デニー知事との面会は打診しなかった。

 官邸側は「知事には既に会っているので、市町村を回ることにした」と理由を説明した。

 別の県関係者は、那覇市やうるま市で安全保障面の懸案で首長の主張の変更が続いていることについて「これまで、地元の言い分を受けて県としても国に要請してきた。今までの対応はなんだったのか」と疑問を口にした。

(知念征尚まとめ)