ミサイル迎撃3倍増、奄美・沖縄に7部隊 政府の計画判明


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 日本を狙う弾道ミサイルを迎撃する「弾道ミサイル防衛(BMD)システム」に関し、政府が2031年度末までに目指す増強計画の概要が4日、判明した。地上の迎撃網を強化するため、新たに陸上自衛隊の14の地対空部隊にミサイル迎撃能力を付与。特に中国に備える南西諸島を重視し、沖縄県の6部隊、鹿児島県・奄美大島の1部隊に配備する。既存の沖縄本島にある航空自衛隊の4部隊と合わせ、3倍近い計11部隊の態勢となる。

 年内に策定する国家防衛戦略(現防衛計画の大綱)などに盛り込む。政府はBMDだけでミサイルを防げないとして反撃能力(敵基地攻撃能力)を検討しており、計画との関係を問われそうだ。

 計画概要では、航空機対処を主目的とする陸自の「03式中距離地対空誘導弾」(中SAM)を弾道ミサイル迎撃が可能な仕様に改修。26年度に配備を始め、部隊の新編を含めて31年度までに茨城、千葉、山梨、福岡などに置く。沖縄では本島3カ所と、宮古、石垣、与那国の3島に配置する。

 中SAMは中国やロシア、北朝鮮が開発を進める極超音速滑空兵器に対応するための改良も実施し、29年度までの量産開始、32年度からの部隊配備を目指す。

 空自が運用する地対空誘導弾パトリオット(PAC3)は、防護範囲が広い改良型の「PAC3MSE」を全28部隊に導入。極超音速兵器への対応能力が強化されたレーダーも首都圏や九州に導入する方針だ。

 洋上では、防空能力の高い「イージス・システム搭載艦」2隻を28年度までに就役させ、既存の海上自衛隊イージス艦8隻で南西方面の洋上警戒態勢を強化。8隻のうち半数には防護範囲が広く命中精度の高い迎撃ミサイル「SM3ブロック2A」を装備する。

 イージス・システム搭載艦は、北朝鮮が多用する通常より高度の高い「ロフテッド軌道」の発射に対処。極超音速兵器への対応に向け、迎撃ミサイル「SM6」に加え、より早い段階で迎撃するため米国が開発中のミサイルも将来的に搭載できるようにする考えだ。
(共同通信)