人工中絶の要件判断、現場任せに医師ら苦悩 配偶者同意めぐる裁判 「昔の価値観」「DVねつ造」…社会に問題提起


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福岡高裁那覇支部

 人工妊娠中絶で原則必要とされる配偶者同意の判断を巡る福岡高裁那覇支部判決は、女性の説明を信用した医師側の過失を否定した。一方で、配偶者同意に関する確認の必要性の程度については事案ごとにまちまちであると判示。医師側は判決に安堵(あんど)しつつ、母体保護法が規定する同意要件に疑問を投げかけた。

 「医師の責任は今回はないという判決。一安心している」。代理人の日高洋一郎弁護士は、控訴審判決後のオンライン記者会見でこう明かした。配偶者同意について「昔の価値観がいまだに残ってしまっている。現代の価値観だと憲法違反という認識だ」と述べた。

 同席した産婦人科医で「女性の人権を守る医師を支援する会」の種部恭子代表は、母体保護法の要件判断が現場に委ねられ、医師が葛藤する現状を説明。訴訟リスクを恐れた医師が配偶者の同意を求め、妊娠の継続を望まない女性が苦しむこともあるという。「今回の事案だけでなく、それぞれ苦悩しながら対応している。この課題を社会に提起していただきたい」と話した。原告の男性は、実際にDVがあった場合には配偶者同意が不要だと考えるとした上で「配偶者か不倫相手の子か分からない場合は、DVの捏造(ねつぞう)、またはDVのような行為もあったと医療機関に伝えるだけで中絶できてしまうようになるのは恐ろしい」とコメントし、上告する考えを示した。