赤ちゃんのへその緒(臍帯(さいたい))と胎盤に含まれる臍帯血(さいたいけつ)を利用して白血病などの治療に役立てる「臍帯血バンク」。臍帯血には赤血球や白血球、血小板などの血液細胞のもとになる細胞(造血幹細胞)が骨髄と同じくらい含まれていることから、骨髄移植と同様の治療ができるとして活用が広がっている。一方で採取できる施設が限られ、認知度に課題が残る。
「県骨髄バンクを支援する会」代表の上江洲富夫さん(70)は11月29日、那覇市泉崎の琉球新報社を訪れ、臍帯血バンクについてPRし「(臍帯血は)本来は捨てられてしまうものだが、それで難病の患者を救うことができる。臍帯血バンクをやってもいいかなと思う人が増えてほしい」と話す。
臍帯血の採取は出産後に赤ちゃんと臍帯が切り離された後、臍帯と胎盤に残っている血液(臍帯血)を取る形で行われる。母子に痛みなどの負担は全くない。
採取した臍帯血は白血病や再生不良性貧血など重い血液の病気の治療に役立てるほか、根本的な治療法がない脳性まひ患者らの運動機能の改善などへの治療効果が期待されている。
臍帯血の保管先には、白血病患者ら第三者に寄付する「公的バンク」と、本人や家族が将来病気になったときの治療に備えて有料で預かる「民間バンク」がある。
沖縄で公的に臍帯血が採取できるのは沖縄赤十字病院のみ。同院では2015年7月から採取が始まり、22年10月現在で202件の受け入れ実績がある。一方で採取した後も感染症の検査など厳しい基準をクリアしなければならず、保管できているのは202件のうち17件にとどまっている。
採取した臍帯血は日本赤十字社の九州ブロック血液センターへと送られ、そこから全国の患者へと届けられる。
白血病や再生不良性貧血の移植に利用する際には白血球の型(HLA)が一致していることが条件で、沖縄は県外では珍しい型を持っている人が多いなど特殊な地域性があるため、沖縄で多くの臍帯血が採取できる意義は大きいという。
上江洲さんは「臍帯血バンクについて、まだ知らない県民も多いと思う。患者を救うためにも、臍帯血バンクが普及してほしい」と話した。問い合わせは同会の上江州さん、電話090(3196)4064。
(嶋岡すみれ)