差別の歴史を今につなぐ 「人類館」を学ぶ企画展 沖縄・なは―と


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人間の展示に関する資料を解説する小原真史さん(手前)=11月、那覇文化芸術劇場なはーと

 【那覇】9~11月に那覇市の那覇文化芸術劇場なはーとで開催された企画展「帝国の祭典―博覧会と〈人間の展示〉」(那覇市主催)のギャラリーツアーがこのほど、同劇場で催された。キュレーターを務めた小原真史東京工芸大准教授が展示について解説。19世紀中頃から20世紀初頭の万国博覧会などで植民地や非西洋諸国の集落を再現する「人間の展示」が行われ、後発帝国主義国の日本も西洋を模倣したことを紹介した。

 企画展では小原さんが所蔵する博覧会と人間の展示に関する数百点の資料を展示した。1867年のパリ万博を視察した渋沢栄一らは西洋人から展示物のように見られたという。日本では1903年の内国勧業博覧会の場外に設けられた「学術人類館」で初めて人間の展示が行われ、アイヌや沖縄の人々が展示された。戦争で領土を拡大し、12年には本格的に植民地をテーマにした拓殖博覧会を開催し「(日本が)調査される側から調査する側」になった。

 大正期に交通網が発達すると、アイヌの集落そのものが観光地化された。小原さんは「今のグローバリゼーションの時代では世界中が人類館化していくのではないか」と指摘した。また「野蛮な時代がそれほど昔ではないことに驚くべきだ。僕らも50年後の人たちから見たら野蛮かもしれない」と語った。

 小原さんは、近年、ヘイトスピーチが増加するなど「レイシズムはいけないという共通理解が壊されていく」ことに危機感を抱き、「展覧会を作る人間として時代に抗する」ためにこの企画展を開催したという。「植民地博に反対した過去のアーティスト、そして未来の文化関係者に向けた展覧会でもある」と語った。
 (伊佐尚記)