旅行支援なのに倒産ピンチ 県内旅行社の立て替え支払い進まず


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観光客らでにぎわう国際通り =14日、那覇市

 国内旅行需要喚起策の全国旅行支援による立て替え金負担が、旅行社で深刻化している。10月11日に制度が始まって以降、県内のほとんどの旅行社に代金の支払いがなされていない。旅行社からは「このままでは会社が倒産してしまう」と訴える声が挙がる。

 全国旅行支援は、国が予算を配分し、都道府県がそれぞれの名称でキャンペーンを行っている。立て替え金が発生するのは、(1)旅行代理店を通して予約(2)ホテルへ直接予約(3)加盟店で地域クーポンを使用―の三つのケース。

 立て替え金の支払いは都道府県の事務局が行う。沖縄を扱う旅行社は全国に3700社ほどあり多くの事業者が参画することから、混乱を防ぐために、都道府県の事務局は奈良県以外の46都道府県で構成する「全国統一窓口」にエージェントを委託している。

 全国の旅行社は全国統一窓口を通して支払いを申請する。窓口で審査した後に自治体の事務局で2次審査し、立て替え金が支払われる。全国統一窓口から旅行社への通知では、書類を提出している事業者のうち5割が、不備のため再提出となっている。

 申請には宿泊先の特定が必要で、ホテルごとの管理コードの入力が必須という。旅行社によると、事業に参画していないホテルに泊まっている、コードが間違っている、空港名が違うなど、複雑な手続きに不備も生じている。

 県文化観光スポーツ部の担当者は「こちらにほとんど(旅行社からの)申請が下りてこない」と、全国統一窓口で手続きが滞っている可能性を示唆した。

 将来的な入金が見込めるとはいえ、各種支出のタイミングもあるため立て替え金の支払い遅れは旅行社にとって大きな負担となっている。

 県内最大手の沖縄ツーリスト(OTS)は、開始以来支払いがなく、立て替え金は数億円にのぼるという。OTS沖縄感動企画本部の吉田勝徳副部長は「(支払いが)遅くなればなるほど立て替え金の負担が重くなる」と話した。

 県内の別の旅行社も10月分から振り込まれていない。担当者は「マンパワーが足りない中で複雑な手続きが加わり、従業員は連日残業を強いられている」と吐露した。

 スタッフは1カ月約1万件の申請を3日ほどかけて行う。予約の管理や案内、質問やクレームの対応など、数多くの業務をこなしている。

 担当者は「人手が足りないが、旅行社がキャンペーンの間だけ人を雇うことは難しい。自治体が補助金を(観光客など)利用者に直接キャッシュバックする仕組みにすれば良かった」とこぼした。 (與那覇智早)