IT駆使しサンゴ養殖 、障がい者就労支援に新たな場 環境保全や雇用のミスマッチ解消目指す 那覇・サンクスラボ


社会
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サンゴが入った水槽を清掃する兼本寛さん=那覇市泉崎のサンクスラボ

 ITを駆使してオフィス内でサンゴを養殖し、海に植え付ける「里海珊瑚プロジェクト」がこのほど県内で始まった。事業を展開するのは障がい者就労継続支援事業のサンクスラボ(那覇市泉崎)。村上タクオ社長は「障がいがある人が活躍できる場所づくりと県内の海の豊かさを守りたい」と思いを込める。

 特徴はサンゴの養殖管理に障がい者が就労支援として取り組みスキルを身に付けて、障がい者雇用枠で企業に就職できること。就職先の企業では、引き続き養殖の仕事をする。企業は障がい者雇用の法定雇用率の順守につながり、さらに環境保全への貢献にもなる。

 サンゴ養殖は同社ビル内の陸上水槽で行う。水槽にセンサーを取り付け、水温や塩分濃度などをリアルタイムで測定。ITを駆使し水槽の状況を「見える化」した。就労継続支援の利用者がデータを基にした水槽管理や清掃を行う。サンゴにとって有害な生物の発見や異常に気付ける技術を日々身に付けていく。養殖したサンゴは地元ダイバーの協力で県内の海に植える。

 養殖サンゴにはオーナー制度も導入。管理はサンクスラボが行う。遠く離れた場所からでも企業や個人が沖縄の海や生物を守る活動に関与できる。企業には一定割合の障がい者雇用を義務づける法定雇用率制度がある。しかし雇用したくても当事者に合う仕事がないなどの悩みがあった。サンゴの養殖を通して企業と障がい者のミスマッチの解消を目指す。

 免疫機能障がいがある兼本寛さん(51)=那覇市=は水槽の管理、清掃、生物への餌やりなどを担っている。以前、淡水魚を飼育していたこともあり「これしかない」と仕事を楽しむ。「縁の下の力持ちという気持ち」と社会的に意義ある仕事に胸を張る。

 サンクスラボによるとサンゴ業務の就労支援を経て就職したのは4人。村上社長は「あらゆる障がいがある人の持続的な活躍の場をつくりたい」とさらなる発展に意欲を見せる。

(金盛文香)