【解説】安保関連3文書とは?沖縄への影響は?改定のポイント


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 政府が閣議決定した国家安全保障戦略など安保3文書は、県内に駐屯する陸上自衛隊部隊の「倍増」(岸田文雄首相)など、自衛隊が米軍と一体となって進める「南西シフト」をこれまで以上に鮮明にした。新たに保有を決めた「敵基地攻撃能力(反撃能力)」に関連し、県内では12式地対空誘導弾(ミサイル)の射程を約1千キロ以上に延ばす「向上型」を2026年度以降に配備することにしている。沖縄の島々が敵基地攻撃の拠点の一つとなることを意味する。

 政府は防衛体制の強化で「武力攻撃そのものの可能性を低下させる」と説明するが、有事になれば相手領域まで届くミサイルの発射拠点が狙われることが予想される。

 さらに政府は民間の空港や港湾を自衛隊が利用できるような環境づくりを目指す。ジュネーブ諸条約は軍事目標以外の「民用物」への攻撃を禁止しているが、軍事活動に効果的に資すると判断されれば「軍事目標」として扱う。自衛隊の利用を拡大することで、標的となる可能性も高まる。

 既に自衛隊は米軍との地対艦ミサイル展開や民間インフラの利用など、3文書の改定で盛り込まれた方針を先取りし、11月に実施した日米共同統合演習「キーン・ソード」にも取り込んでいる。

 県民の生活や安全に直結する重大な決定が、県民の頭越しになされた。沖縄戦では住民を守る視点が抜け落ちたまま、国を守る軍事面だけが進められた結果、「軍民混在」の地上戦が繰り広げられて多くの住民が犠牲となった。住民の安全確保や外交努力を置き去りにした今回の安保3文書改定も、住民を武力衝突に巻き込むリスクを高める恐れがある。 (明真南斗)